2014年12月22日

(その四) 後藤控訴審判決の歴史的意義:過去の誤った判断を覆した控訴審判決

アメリカのディプログラミングが消滅していく課程において、民事裁判が果たした役割において、以下のとおり、3つのステップがあった。

http://humanrightslink.seesaa.net/article/410305551.html
1980年:ピーターソン判決:拉致監禁グループにお墨付きを与える
「カルトから救出のための自由の拘束は、ある条件下で許容される」
 ↓
1984年:エイラーズ裁判で、ピーターソン判決が覆される。
「被告が実際のところ、監禁されていたというのは、疑いの余地はない。
原告の見かけの同意は、不法監禁に対する防衛にはならない。」
 ↓
1995年:スコット裁判での、決定的判決
アメリカの拉致監禁は終わる。

後藤一審判決(2014年1月)は、宮村峻の違法行為を認めた点において、画期的な面も確かにあったが、松永牧師の違法行為を認定していない点において、言葉を変えて言えば、最初の2年数ヶ月の期間の違法性を認めていない点において、拉致監禁民事訴訟の過去の誤った判決を踏襲 (とうしゅう) したものだった。アメリカの例をとれば、後藤第一審判決は、エイラーズ判決の足元にも及んでいない。

では、後藤控訴審判決は、どうだったのか?
press conference 20141113.jpg
Press Conference 2014-11-13

エイラーズ判決の特徴は、それ以前の誤った判断を修正したことだ。その判決文は、「"監禁" の事実を認定し、被害者の "同意したふり" は、実行犯の免責のための防衛にはならない」ことを明確に述べている。

★アメリカ・エイラーズ裁判判決文より
http://humanrightslink.seesaa.net/article/409676523.html
被告が実際のところ、監禁されていたというのは、疑いの余地はない。ピーターソン裁判のミネソタ最高裁の判決をもとに、「原告は被告の行動に同意した証拠があるので実際のところ監禁はなかった」と被告は強弁している。それとは対照的に、原告は、少なくとも監禁の4日目までに逃走の機会を得る手段として同意したふりをしただけだと証言している。原告の見かけの同意は、不法監禁に対する防衛にはならない。多くの人は、似たような状況では、監禁犯への恐怖から、または、逃走の手段として、同意したふりをするだろう。


後藤控訴審判決ではどうか? 1995年9月11日の拉致の場面から、偽装脱会を明らかにするまでの2年数ヶ月間の高等裁判所の認定に関して抜粋してみたい。この期間についての第一審の判断は、大いに "問題あり" の箇所だった。


★原告が、ワゴン車に乗せられ、新潟に移送される時の状況の認定

控訴審判決文より:
http://antihogosettoku.blog111.fc2.com/blog-entry-297.html
仮に新潟に向かう途中に,給油のために一時停車することがあったり,控訴人において,かつて被控訴人<兄>自身が脱会説得のためにワゴン車に乗せられた時のような強い抵抗を示さなかったものとしても,それは,それまでの脱会活動をめぐる説得者側と統一教会信者側との攻防によって培われた駆け引きの一環と考えるのが相当であって,控訴人がワゴン車に乗せられる時に強い抵抗を示さなかったこと自体,むしろ控訴人において逃亡の機会をうかがっていたものと考える方が自然であるから,控訴人が強い抵抗を示さなかったことをもって,控訴人が自由かつ任意の意思で,被控訴人<兄>らの説得に応じようとしていたものとみることはできない

本件では,控訴人がワゴン車に乗り込み,同車が新潟に向けて走行を開始し,その途中で控訴人が尿意を催してトイレ休憩を求めたのに,被控訴人<兄>らは,これに応じようとせず,車内に用意したポータブルトイレを使用するよう求めるなどしたものであり,この時点において,当初の計画どおり,控訴人の自由な行動を制約することが外形的にも明らかになったものと認められるから,被控訴人<兄>らによる控訴人に対する行動の自由の違法な制約が開始されたものと認めるのが相当である。

同じに箇所に関する、第一審の判決は、「平成7年9月11日の亡■<後藤徹氏の父>宅における状況は,原告においては,渋々ではあったものの,亡■<後藤徹氏の父>らの求めに応じ,自らワゴン車に乗り込んでおり,当該状況の態様をもって,直ちに原告が主張するような原告に対する 拉致行為があったものと認めることはできず,その際の被告■<後藤徹氏の兄>らの行為に違法性を認めることはできない。」だった。

第一審では、"渋々自らワゴン車に乗り込んだ" ことをもって、拉致行為とは認めず、違法性を認めなかった。控訴審判決では、"強い抵抗を示さなかったこと" を "逃亡の機会をうかがっていたもの" とし、ワゴン車に乗り込んだことは、"控訴人が自由かつ任意の意思" ではないとしている。

被害者の一時的な同意、渋々の同意により、実行犯が免責を求めるのは、アメリカでも、日本の過去の裁判でも同じであった。アメリカでは、1984年のエイラーズ判決により覆され、日本では、アメリカより30年遅れたことになるが、2014年11月に、過去の誤った判断 (後藤第一審判決も含めて) が覆されたことになる。日本の拉致監禁がなくなっていく過程において、歴史的な判決の一場面だと思う。


★新潟・パレスマンション多門での、19995年9月11日〜1997年6月22日までの滞在について:

控訴審判決より
http://antihogosettoku.blog111.fc2.com/blog-entry-301.html#more
控訴人のパレスマンション多門における滞在は,控訴人の父親である亡<父>の意思に沿うものであり,親子兄弟の情愛に根ざして始められたものであるとは認められるものの,控訴人は,昭和38年11月2日生まれの成人男性で,平成7年9月11日当時,既に31歳で,特に他者の介護や補助を受けなければ日常生活等に支障があるという状態ではなかったことは明らかであるから,親兄弟といえども,控訴人を別個独立の人格を有する個人として十分に尊重しなければならないことは当然のことであり,控訴人の信じている宗教の内容が親兄弟の考え方と異なるからといって,任意の説得の範囲を超え,有形力を行使して,その自由な意思や行動を制約し,強制的に統一教会からの脱会を迫ることは,もはや社会的に許されている親子兄弟による任意の説得の範囲を超えるものであって違法であり,客観的には監禁と評価されても致し方のないものであったと認めるのが相当である。


この箇所の関する一審判決は、「原告自身,家族から 脱会説得を受けた場合の対処方を心得ており,偽装脱会を行って時期をみて統一教会のホームに戻ることを企図しながら,話合いに応ずる姿勢を示していたことが窺われ,また,本件証拠上,その間を通じて,被告■<後藤徹氏の兄>らに対して各滞在場所から自身を退出させるよう求めたり,機会をねらっ て各滞在場所からの退出を試みたり,各移動に際して抵抗を試みたりしたことが窺われないことからしても,原告が自身の置かれた状況を一応容認していたことが窺われるところであって, その間の被告らの行為については,直ちに違法性を認めることは困難であるというべきである。

東京から新潟への移送における違法性を、高等裁判所は明確に "違法な制約" と判断し、さらに、新潟での滞在を、任意の説得の範囲を超える "監禁" と評価した。

控訴審は、"強い抵抗を示さないこと" をもって、原告の任意の意思とは判断せず、逆に、「逃亡の機会をうかがっていた」 と判断し、実行犯への免責を認めなかった。後藤氏の監禁の最初の2年数ヶ月間に関する一審判決の誤った判断が、控訴審判決で完全に覆された。「"監禁" の事実を認定し、被害者の "同意したふり" は、実行犯の免責のための防衛にはならない」とした、アメリカのエイラーズ判決と似た内容である。

後藤控訴審判決は、エイラーズ判決と同じレベルに到達した。日本では、ここまで来るのに、アメリカに遅れること30年、ミツコ・アントールさん等の裁判から15年近く経過したことになる。
 

2014年11月13日(木)午後、控訴審の判決が言い渡され、閉廷した。傍聴人は、ぞろぞろと出口に向かった。しかし、被告席の人々は、そんな姿は見たことはないくらいな沈痛な面持ちで、お互い言葉を交わすこともほとんどなく、呆然と立ち尽くしていた。そして、彼等は、予定していた記者会見をキャンセルした。被告らにとっては、それほど、衝撃的な判決だったということだ。

しかし、被告の弁護士達は、まるで、アメリカの後を追っているような、その歴史的な敗北にはまだ気が付いていないのかもしれない。被告の弁護士さんには、是非、この記事を読んで頂いて、自分達が、今、どこらにいるのか、よく感じて頂きたいと思う。(続く)

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posted by 管理人:Yoshi at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 後藤裁判控訴審 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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