前回の記事 (2014-11-7) にて、広島で起きた夫婦同時拉致事件についての続報 (高澤守牧師等を刑事告訴) を掲載しています。まだの方は、是非、ご一読下さい。
★高澤守牧師と親族を刑事告訴 - 広島の夫婦同時拉致被害者
http://humanrightslink.seesaa.net/article/408501790.html
甲184号証の最後の部分を、掲載させて頂きます。連日の記事アップで、読むほうも大変かと思いますが、頑張ってください。今回の連載は、以下の目次の赤字部分です。
序論 ……………………………………………………………………………… 2
I. 一般的状況 …………………………………………………………………… 3
II. 宗教的「説得」と「リハビリテーション」 ……………………………… 5
III. 品位を傷つける扱い ………………………………………………………… 7
IV. 女性に対する暴力 …………………………………………………………… 8
V. 日本の当局による助力 ……………………………………………………… 10
A) 警察の怠慢または助力 ………………………………………………… 10
B) 起訴の不存在 …………………………………………………………… 15
C) 民事裁判所:拉致・棄教強要に対する差止請求の棄却 …………… 18
VI. 法的論証:国際的人権条約に対する違反 ………………………………… 21
結論 …………………………………………………………………………… 28
(読みやすくするため、段落間に行をあけたり、色、枠をつけたり等の作業を行いましたが、文章自体は、裁判所に提出された原文のままです。)
VI -法的論証:国際的人権条約に対する違反
市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)の第18条は宗教および信仰の自由権を保障し、とりわけ第18条2項は次のように規定している:
何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
日本が署名し批准したこうした規範の下で日本国民は、宗教や信念を自ら選択する自由があり、日本政府は国民がこうした自由を損なう強制力を被ることがないよう保障しなければならない。民間当事者によって強制力が行使された場合にも、この規範が適用される。
第18条3項の下で国家は、以下の内容を保障しなければならない:
(a) この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること。
(b) 救済措置を求める者の権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。
(c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。
従って日本政府は、民間の当事者が特定宗派の信者に対して信仰を棄教させる圧力をかける等の強要行為を禁止しなければならない。そうした強要行為があれば、然るべき救済措置が講じられるようにする責任が当局者にはある。
「規約人権委員会」(Human Rights Committee)は、第28条に則って「規約」の諸規定を確実に実施するため設置されたものだが、「総評(General Comment)22号」を採択し、「規約」が保障した良心の自由に関する権利の範囲と意義を説明している。それは新宗教や弱小の教団も、伝統的宗教と同じ土俵で保護を受けるべきことを明らかにしている。
2. 第18条では、一神教や非一神教の信仰や無神論、および特定の宗教や信念を持つこと、および持たないことの権利を保障している。「信念」や「宗教」という用語は広義に解釈されるべきだ。第18条は伝統的宗教にだけ適用されるのではなく、それらに類似した組織や実践をする宗教や信念にも適用される。そこで同委員会は宗教や信念の如何を問わず、いかなる理由、例えば創設されたばかりの宗教だとか、弱小教団でありながら有力教団にとって厄介な存在であるとか、諸事情があっても、それらを差別することに対して監視している。
従って伝統的宗教の信徒が敵意を露わにした場合、例えばプロテスタント教会の牧師が弱小教団を標的にするような場合、日本政府は「規約」第18条を援用して、そうした弱小教団の信者の権利が尊重されるようにしなければならない。
規約人権委員会は「総評22号」の中で、さらに以下のように説明している:
5. 宗教や信念を保持し実践する自由は、宗教や信念を選択する自由に包含されており、それには現在の宗教や信念を別のものと替えたり、無神論的な見解を持つ権利や、個人の宗教や信念を保持する権利を含んでいる。18条2項は、宗教や信念を持ち、あるいは選択する権利を損なわせるような強要を禁止しているが、それには物理的力による威嚇、刑罰を用いて信仰者または非信仰者を特定の宗教や集団に帰属させようとすること、及び宗教や信念を放棄させることや改宗させることを含む。
従って「規約」が保障する諸権利は非常に明確だ。すなわち第18条は、個人の宗教や信念を保持する権利を保護している。従って、日本政府は、有力教団や成人信者の親たちから敵意や懸念を持たれているような信仰であったとしてもこの権利を保障しなければならない。
新宗教や弱小教団の信者に、その信仰を放棄させ、伝統的宗教に改宗するよう強要すること、例えば物理的監禁や強制「説得」などは、「規約」に照らせば違法である。
そして、日本の裁判所は少数派宗教の信者に対する拉致および強制棄教事件に対して判決を下す際には、ICCPRの規定を適用しなければならない。
日本国憲法もまた、以下の条項において宗教の自由を保護している:
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
にもかかわらず、成人した子供に対する家族の権威という日本の観念は、宗教および信仰の自由に対する日本の義務に違反している。
裁判所は、例えば美津子に対する全ての悪行は、彼女が自分の両親に対して統一教会への入会について嘘をついたことと、両親に嘘をつくことは悪であるという事実によって正当化される、という判決を下している。
これは(25歳の大人であった彼女を)非常に子ども扱いした言説である。そして日本におけるこのような法の適用は、両親が成人した子供に対して、自分たちの信念に従うべきだと要求する権利を作出する傾向がある。
しかしながら、国際的人権法の下ではそのような権利は存在しない。
成人した信者は、ICCPRの第18条によって保護される権利があり、彼らの権利には、自身の宗教的信条を明らかにしない権利も含まれている。
プロテスタント教会の牧師が果たす役割とそれに対する日本当局による助力に関しては、これは宗教的な事柄に対する国家の中立の義務に対するあからさまな違反を構成する。この件については、日本国憲法の第20条は適用されていない。
これらすべての理由により、日本はICCPRの第18条の下にある国際的義務に違反している。
目下の問題に関係するICCPRの条項は他にもある:
第7条 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。
第9条
1 すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。
(…)
5 違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。
第27条
種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。
規約人権委員会は、第27条の意味を説明するために「総評23号」を採択した:
6.1. 第27条は否定的な言葉遣いで表現されているが、にもかかわらず、「権利」の存在を認めており、それが否定されないよう求めている。それ故に、締約国はこの権利の存在と行使が、否定や侵害から守られるよう保障する義務を負っている。したがって、立法、司法、行政当局を問わず、締約国そのものの行為からの保護だけでなく、締約国内の他の人々の行為からの保護に関しても、積極的な手段が必要である。
したがって日本は、統一教会の信者のような少数派宗教者を、その領土内の私人の行為から保護しなければならない。
ICCPRの第7条と第9条(品位を傷つける取扱いと不法拘留)に関しては、日本を拘束している国際条約がさらに2つある。日本が支持している「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける扱い又は刑罰に関する条約」と、日本が署名し批准している「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」である。
「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」は関連個所で以下のように規定している:
第一条
1.この条約の適用上、「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人若しくは第三者から情報若しくは自白を得ること、本人若しくは第三者が行ったか若しくはその疑いがある行為について本人を罰すること、本人若しくは第三者を脅迫し若しくは強要することその他これらに類することを目的として又は何らかの差別に基づく理由によって、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものをいう。「拷問」には、合法的な制裁の限りで苦痛が生ずること又は合法的な制裁に固有の若しくは付随する苦痛を与えることを含まない。
第十六条
1.締約国は、自国の管轄の下にある領域内において、第一条に定める拷問には至らない他の行為であって、残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に当たり、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものを防止することを約束する。特に、第十条から第十三条までに規定する義務については、これらの規定中「拷問」を「他の形態の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰」と読み替えた上で適用する。
そして上述の条項は以下のように規定している。
第十二条
締約国は、自国の管轄の下にある領域内で拷問に当たる行為が行われたと信ずるに足りる合理的な理由がある場合には、自国の権限のある当局が迅速かつ公平な調査を行うことを確保する。
第十三条
締約国は、自国の管轄の下にある領域内で拷問を受けたと主張する者が自国の権限のある当局に申立てを行い迅速かつ公平な検討を求める権利を有することを確保する。申立てを行った者及び証人をその申立て又は証拠の提供の結果生ずるあらゆる不当な取扱い又は脅迫から保護することを確保するための措置がとられるものとする。
要するに、品位を傷つける扱いの被害者からのあらゆる訴えに対し、管轄を有する日本の当局が直ちに捜査することを、日本は保障する責任がある。それをしなかったということは、それによって国際的義務に違反しているのである。
「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」は、関連個所で以下のように規定している:
第一条
1.いずれの者も、強制失踪の対象とされない。
第二条
この条約の適用上、「強制失踪」とは、国の機関又は国の許可、支援若しくは黙認を得て行動する個人若しくは集団が、逮捕、拘禁、拉致その他のあらゆる形態の自由の剥奪を行う行為であって、その自由の剥奪を認めず、又はそれによる失踪者の消息若しくは所在を隠蔽することを伴い、かつ、当該失踪者を法の保護の外に置くものをいう。
第三条
締約国は、国の許可、支援又は黙認によらずに行動する個人又は集団が行った前条に規定する行為を調査し、かつ、それらについて責任を有する者を裁判に付するために適当な措置をとる。
ここでも、日本は民間の当事者によるあらゆる強制失踪を捜査し、その犯人を裁判に付する責任がある。日本当局は、この国際条約による義務にも違反している。
最後に、国連の「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」は以下のように規定している:
第一条
この宣言の適用上、「女性に対する暴力」とは、性に基づく暴力行為であって、公的生活で起こるか私的生活で起こるかを問わず、女性に対する身体的、性的若しくは心理的危害または苦痛(かかる行為の威嚇を含む)、強制または恣意的な自由の剥奪となる、または、なるおそれのあるものをいう。
第四条
国家は、女性に対する暴力を非難すべきであり、その撤廃に関する義務を回避するために、いかなる慣習、伝統または宗教的考慮をも援用するべきではない。国家は、女性に対する暴力を撤廃する政策をすべての適切な手段によりかつ遅滞なく追求し、この目的のために、以下のことをするべきである:
(…)
(c)これらの行為が国家によってなされるか私人によってなされるかを問わず、女性に対する暴力行為を防止し、調査しおよび国内法に従って処罰するために相当の注意を払うこと;
日本の当局は常に、彼らが国際人権条約によって負っている責任を回避するために、刑法は家族の問題には介入しないという議論を持ち出してきた。
しかしながら、これは伝統に基づいた単なる習慣に過ぎず、日本の刑法には警察や検察が家族の問題に介入することを妨げる条項は存在しない。
後藤徹は、不起訴処分に対する不服申し立てを検察審査会が審査する前に、法学博士である山上弁護士の意見書を同審査会に提出した。山上博士は、徹の事件における警察と検察の態度を批判し、なぜ刑法が家族の問題に介入すべく策定されているかについての議論を展開した。彼は、家庭内暴力事件において起訴を可能にする、最近制定された法規定について詳しく説明している。初めに彼は、夫婦間の暴力を取り上げる:
そのような介入が切実に必要とされている分野の一つが、ドメスティック・バイオレンス(DV)と呼ばれる夫婦間の暴力と児童虐待である。まず、2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV防止法)が制定されてからは、たとえ夫婦間であっても暴力行為は犯罪であるという認識が広まってきている。
そもそも、夫婦間の暴力といえども、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)、強姦罪(刑法177条)などの刑法上の犯罪に該当する。また、2004年のDV防止法改正では、「暴力」の定義が身体的暴力だけでなく、それに準ずる「心身に有害な影響を及ぼす言動」にまで拡大されるようになった(1条)。
後藤氏の事件は夫婦間の暴力ではないが、暴行罪や強要(未遂)罪が適用されるような深刻な暴力が行われたと被害者が主張しているのであるから、「家族の問題なので法は介入しない」という言い訳は通用しない、と山上博士は結論づけている。
次に山上博士は、法が家族に介入しなければならないもう一つの分野が、児童虐待であると述べている。
2000年に制定された「児童虐待防止法」の第2条は児童虐待を、@身体に外傷が生じたりそのおそれのある暴行(身体的虐待)、Aわいせつな行為をしたりさせたりすること(性的虐待)、B減食や放置など保護者の怠慢行為(ネグレクト)、C心理的外傷を与えること(心理的虐待)、の4つに分けて定義している。
同法は、「児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、該当児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない」(第14条2)と規定しており、親であれば子供に暴力を振っていいとする弁明を否定している。
後藤氏は児童ではなく成人であり、後藤氏の両親や兄弟は彼に対して親権を行使する立場にはなかった。親権を行使する権利のある親でさえ、このような虐待を行うことは禁じられているのであるから、ましてや成人した個人に対してその親や親族が虐待を行えば、それが違法行為になることは明らかであると山上博士は結論づける。後藤氏は上記4つの虐待の定義のうち、@身体的虐待、Bネグレクト、C心理的虐待を12年間にわたって受けている。
しかし、日本の警察と検察は、それらが被害者の両親が参加して行われているという名目のもとに、少数派宗教の信者たちに対するこれらの拉致監禁に終止符を打つことも、制裁を加えることも拒み続けてきた。
日本の刑法の規定は、この意味で当局を介入させるに十分であり、またそうすべきであった。それは「行方不明者発見活動に関する規則」が、被害者が警察によって救出されるために十分であり、かつそうすべきであったのと同様である。日本の法律を適用していないことは、結果として、ICCRPの第7条、第9条、第18条、第27条、および日本を拘束している前述の国際人権条約に違反する。
結論
宗教および信仰の自由に関する特別報告者であったアスマ・ジャハンギール女史は、2010年3月1日から26日にかけて開催された国連人権理事会の第13会期の期間中、2009年度の年次報告を提出した。国連経済社会理事会の特殊協議資格を持ち、統一教会と関連のあるNGOであるUniversal Peace Federationが、日本における棄教を目的とした拉致監禁問題に関する声明文を提出した。
アスマ・ジャハンギール女史の、国家の役割に関する最初の結論と勧告は以下のとおりである: (A/HRC/13/40, 21 December 2009)
「国家は、宗教または信仰の自由の促進と保護を含め、国際的な人権基準を施行する上で主要な責任を有する。一方で、国家は宗教および信仰の自由の侵害を控えなければならないし、また一方で、自らの管轄下にある人々を、非国家主体(non-Sate actors)によって行われる虐待を含む人権侵害から守る義務がある。手段は、そのような行為の犯人を起訴し、被害者に対する補償を提供することだけにとどまらず、そのような行為が将来再発することを避けるための具体的な予防措置を考案することも含むべきである。」 (§52)
これらすべての国際的人権規範と勧告に違反し、日本政府はこれまで棄教目的の拉致・監禁を行った者を起訴せず、被害者らに対して殆ど補償を提供せず、行為者に対する差止請求を棄却してきたし、また行方不明者を捜索することによって拉致監禁を緊急に阻止する行動を執ることを拒絶してきた。
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以上、甲184-2号証 完了
後半で、法学博士である山上弁護士の意見書を引用している(上記、青文字箇所の部分)。ドメスティック・バイオレンスと児童虐待問題を挙げ、後藤氏の問題に法が介入するべき理由を述べている。
すごく、急いでしまったが、こんなところで、甲184号証の紹介を終えたいと思う。多分、次の記事は日本からの投稿になると思う。
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