2014年11月05日

<その一> 後藤裁判 控訴審 甲184号証

1週間後の、2014年11月13日(木)に、後藤裁判控訴審の判決が出る。ここ、1ヶ月以上、その控訴審で原告の後藤さんサイドより提出された甲185号証を紹介してきた。甲185号証は、「国境なき人権」 が作成した報告書で、国連・自由権規約人権委員会に、2013年7月に提出された書類である。

その続きとして、甲184号証を、判決日までにと思っていたが、(私の怠け癖のためだが・・・) 時間がなくなってきた。読むほうは大変なことになるかもしれないが、判決前の今しかできないこともある思い、甲184号証の掲載を強行したいと思う。

甲184号証は、「全国 拉致監禁・強制改宗被害者の会(代表=後藤徹氏)」により作成された報告書で、甲185号証と同じく、国連・自由権規約人権委員会に提出された。以下、その目次である。今回は、第四章(IV.) の女性に対する暴力 (以下の赤字部分)までを掲載させて頂く。

日本における拉致と強制棄教
2013年6月30日


序論  ……………………………………………………………………………… 2

I. 一般的状況 …………………………………………………………………… 3

II. 宗教的「説得」と「リハビリテーション」 ……………………………… 5

III. 品位を傷つける扱い ………………………………………………………… 7

IV. 女性に対する暴力 …………………………………………………………… 8


V. 日本の当局による助力 ……………………………………………………… 10

A) 警察の怠慢または助力 ………………………………………………… 10

B) 起訴の不存在 …………………………………………………………… 15

C) 民事裁判所:拉致・棄教強要に対する差止請求の棄却 …………… 18

VI. 法的論証:国際的人権条約に対する違反 ………………………………… 21

結論  ……………………………………………………………………………  28



甲184-1号証は、国連・自由権規約委員会に提出された英文の報告書であり、国連ウェブサイトで読むことができる。

甲184-2号証は、甲184-1の日本語版であり、今回紹介するのは、その最初の約10ページ分である:
読みやすくするため、段落間に行をあけたり、文中、色、注を加えたり、枠をつけたり等の作業を行いましたが、文章自体は、裁判所に提出された原文のままです。
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序論

本報告書は、東京に事務所を持つ全国拉致監禁強制改宗被害者の会によって作成された。被害者の会はその権利を軽視された拉致および強制棄教の被害者作成の10通の陳述書を本報告書に添付する。

彼らは全員が家族によって拉致され、数か月、あるいは数年にわたって監禁された統一教会の成人信者であり、その家族らはいわゆる「脱会カウンセラー」の助力及び助言を受けていた。さらに「脱会カウンセラー」は、これら信者らを棄教目的で強制下において「説得」した。

これら10名の被害者は、大半が女性であり、その後解放され自分達の体験を語った。その中の一人は、12年以上にわたって監禁されたのであった。

批判、反対、侮辱、言葉と物理的な力による虐待によって、彼らに「強制的脱会説得」を施した「カウンセラー」は、一人を除いて全員が、統一教会を競合相手とみなすプロテスタントのキリスト教に属している。彼ら全員が、自分は真の信仰と聖書の正しい解釈を知っているとの主張のもと、被害者の信仰に対して強制的な「リハビリテーション」を試みた。

「強制的脱会説得」という言葉がこれらのカウンセラーや両親によって使われることは決してない。しかし彼らの目的は、彼らの成人した子女らが統一教会によって施されたと主張するマインド・コントロールを解くことにある。これはまさに、1980年代に法廷が違法判断を下すまで、米国において行われていた当時の「強制的脱会説得(ディプログラミング)」の概念そのものである。

これらの実践には、様々な権利侵害が伴っている。宗教または信仰の自由に対する侵害、身体的虐待、強制失踪、女性に対する暴力、および少数派宗教に対する権利侵害である。

これらすべてのケースにおいて、日本国は、国際的な人権条約上の義務の下に、被害者に対する権利侵害を許容したことに対する責任を負っている。警察は監禁を終結させるための行動をとらなかったし、ときには積極的に助力した。日本の民事裁判所はこれらの権利侵害を阻止するための差止請求を棄却した。検察官が刑事事件として起訴したことは一度もない。

このような状況において、拉致と強制棄教は今日まで続いてきた。

1960年代後半以降起きた数千件の事件を考慮して、統一教会は信者たちに対して、反対情報およびこれらの強制的脱会説得の専門家らが両親に与える悪影響、そして棄教目的による拉致・監禁の可能性について警告してきた。

一人の信者が現在失踪中である。彼は行方不明となり、救出を求めてGPSによる位置情報と共にテキスト・メッセージを送ってきた。彼は自分の両親が信仰に反対しており、彼を監禁する可能性があることを知っていたため、自分が消息を絶った場合には弁護士か統一教会のメンバーが自分を探してくれるように、事前に弁護士に対する委任状に署名していた。警察は行動を起こすことを拒否し、「彼は家族と話し合いを行っている」という彼の両親の言葉を文字通りに受け取っただけだった。被害者の会は、この件に関して日本の様々な当局者に対し介入を促し結局は徒労に終わった証人作成の追加の陳述書を添付する。

従って、自分達の苦痛に満ちた体験について証言している被害者らによる上述の陳述書に加えて、被害者の会は、この人物が救出され解放されるための緊急の行動を、謹んで要求するところである。

以下に、添付した被害者の陳述書のリストとその特徴を示す:
- 証言に応じた最近の被害者:M・ケイイチ、K・ミユキ、M・アツコ、I・ノブコ。彼らはそれぞれ2010年、2011年及び2012年に監禁されている。

- 後藤徹は、12年以上にわたって監禁され、最終的に2008年に解放された。彼の刑事告訴は不起訴となったが、現在民事裁判を係争中である。

- 元木恵美子と寺田こずえとは刑事告訴したが、起訴は不必要とされ不起訴処分となった。寺田こずえの場合、民事訴訟で勝訴し、不法行為が認められたにもかかわらずである。

- アントール美津子は、再度棄教目的の拉致監禁をしないよう求めて差止請求を行ったが、民事裁判所は請求を棄却した。

- 女性に対する暴力に関する2件の追加事例:監禁中に妊娠5ヶ月だった Y と、2年7か月に及ぶ2度目の監禁の末に棄教せざるを得なかった美山きよみ。

- 2013年4月27日以来行方不明のI・タカノリに関する証人の陳述。
<注 by Yoshi> 被害者の各陳述書は、国連のウェブサイトにも掲載されていなし、甲184号証には含まれていない。


T.一般的状況

日本社会は仏教と神道の信者が大多数を占めており、それらは宗教的実践とまでは行かなくとも、文化においては互いに交じり合っている。

日本の伝統においては、家族は神聖なものとみなされ、子供たちは成人に達したとしても彼らに対する権威を維持する両親に対する尊敬の念を抱く。とりわけ女子においてはそうである。両親はまた、自分たちが年老いたときには、子供たちが世話をしてくれることを期待する。

統一教会信者の両親らが多くの懸念を表明してきたのは、彼らの子供たちが韓国人と結婚し、外国に行って暮らそうとしたからであり、この懸念はまた韓国に対する歴史的な差別によってより強いものとなる。信者たちが文師夫妻を自分たちの「真の父母」であるとする信仰に対してもまた、成人した子供たちが実の親を拒絶するようになるのではないかとの懸念が表明された。これはメディアと強制的脱会説得の専門家らによって促進された誤解であることが明らかになった。なぜなら、文師の信者たちが彼のことを精神的な父とみなすことによって、実際に統一教会のメンバーたちが彼らの両親や家族との絆を維持することに気を遣ったり、反対する敵対的な家族に対して彼らの信仰を説明するために可能な限りのことをしたりするのが妨げられることはなかったからである。実はこれが、彼らが拉致され監禁される危険があることを知っていながら、それでも敵対的な家族を訪問し、監禁下にあってさえも彼らの家族に信仰を理解させようと真摯に試みた理由なのである。

しかしながら、両親の恐れと、自分の子供を統一教会よりはむしろプロテスタント教会の手に預けようとする両親の態度を利用して、強制的脱会説得の専門家らは彼らにセミナーを受けさせる。そこで彼らは「教育を受ける」か、統一教会に関するさらに間違った情報を伝えられ、自分の子供に対する「強制的脱会説得」に成功した他の親たちの体験談を聞かされる。そこで、彼らはどのように拉致監禁を実行するかについて説明を受けるが、両親が何か違法なことをするのだと感じないように、強制的脱会説得の専門家らは慎重にもそれを「保護」と呼ぶのである。強制下で棄教させる行為は、用心深く「説得」や「救出」と呼ばれている。

両親が子供の「救出」に備えるこの「教育」は、通常は数年間続き、統一教会のメンバーが知らない間に行われる。そしてそれは統一教会信者の信仰を破壊するために雇われる強制的脱会説得の専門家らの実質的な収入源となるのである。国境なき人権が日本における事実調査旅行の後に発表した2012年9月の報告書によれば、強制的脱会説得にかかる費用は400万円(4万ユーロ)から1000万円(10万ユーロ)まで様々であるという。元統一教会信者が統一教会を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こしていた弁護士の一人が、たまたま強制的脱会説得の専門家の行いを知ることとなった。彼は被害者の一人である後藤徹の裁判に陳述書を提出しており、添付の彼の陳述書は非常によく真実を明らかにしている。強制的脱会説得の専門家らはまた、うまく信仰を棄てさせることのできた被害者らから他の統一教会信者の名前を聞き出すが、それは恭順の意を示した証拠であると同時に解放の条件でもあり、そのようにして彼らは新たな家族に接触して、彼らの仕事を提案することが可能になるのである。

強制的脱会説得の専門家による両親の教育の一環として、成人した子供を監禁するために、他の統一教会信者に知られていない住所のアパートを借り、ドアと窓に南京錠と鎖と鍵を取り付けて逃げられないようにすることが指導される。拉致する際は、統一教会信者に対する物理的制圧を可能にするため、できるだけ多人数で行われる。添付した陳述書と共に証拠が提出されている。一例として、最近の事例であるM・アツコの事件では、彼女は父親、母親、姉、伯父、叔母、中学高校時代の生物の教師、および保育士の、男性2人と女性5人、合計7人によって拉致され、ワゴン車に押し込められて見知らぬ監禁場所に連れて来られている。

警察が来訪したり、電話をしてきたときには、両親は、これは単なる家族の話し合い、親子の会話だと答えるように言われている。一方、警察は、統一教会からの脱会を巡っての案件だと分かると介入しない。

強制的脱会説得の専門家たちが統一教会信者を棄教させるために用いるトリックの一つは、彼らの両親に対する感情、そして両親を尊敬し従順に従わなければならないという彼らの心情に基づいた、感情的な脅しと圧力である。強制的脱会説得の専門家たちは、これらの成人した子供たちに対して、彼らが統一教会に入ったことによって両親を苦しめていると訴えることにより、良心の呵責を感じさせるのである。

寺田こずえは、韓国人の夫によって解放された後、自身を棄教させようとした強制的脱会説得の専門家高澤牧師との通話を録音した。通話の反訳は、彼女の刑事告訴ならびに民事訴訟の際に証拠として提出されており、彼女の陳述書に添付されている。高澤は、別の拉致監禁事件の際に彼が父親に対してアドバイスした内容についてコメントしている:
うん、その説明というのは、結局ね、親の愛情を示してほしいと、統一教会の人達というのは、心根の優しいね、親思いの人達が殆どだから、だから、そのー手錠とかなんかかけたらこれとんでもないことですからね、だからそうじゃなくて、そのどうしても暴れたりなんかする場合には、本人にしっかり、こうね、紐で逃げないようにゆわいた、その反対の方は親の首に絞めなさいと、結びなさいと、そうすれば、逃げようとすれば親の首が絞まるくらいなね、そういった気持ちをわかるような愛情でね、対応してくださるようにというそういう、何ていうのかな、いわゆる意味を含めた話しなんですね。


これは、「説得」が実際に意味することと、これらの「脱会カウンセラー」によって行われている心理的な操作を示している。

なぜ被害者らがときとして解放後に訴えを起こしたがらないのかについても、両親に対する感情によって説明することができる。訴えを起こした者がいる一方で、それでも両親との関係を改善できるという希望を持っている者もいる。拉致監禁・脱会強要の専門家らは自分達の責任を逃れるために巧妙にも、監禁を行ったのは両親であったと主張してきた。しかし、被害者たちは騙されず、彼らを拉致監禁・脱会強要の真の主体であり首謀者として訴えてきた。しかし、最近の事例では、監禁中においては警察の職務懈怠と監禁行為の助力により、また告訴に対しては不起訴処分により、損害賠償請求に対しては請求棄却によって、司法的救済が妨げられてきた。


U.宗教的「説得」と「リハビリテーション」


ひとたび統一教会信者が監禁されると、脱会説得が開始される。監禁された信者に反統一教会の情報を教え込むために牧師が呼ばれ、主要な宗教教義である「統一原理」に対する批判や、宗教指導者である文師に対する非難がなされ噂話が持ち出され、精神的圧力を加えられ精神不安にさせられ、言葉と暴力による攻撃などの手法が用いられる。成功裏に脱会させることのできた元統一教会信者も、脱会説得の過程で連れて来られる。

統一教会信者が棄教を表明すると、今度は「リハビリテーション」が始まる。このステップには以下のような目的がある。第一に、監禁中に脱会の意思表明をした者たちは、本当に信仰を失ったかどうかをチェックする審査を通過させられる。偽装脱会を見破るためのプロセスである。また、ある者は個人的な関係のゆえに統一教会に対する未練を持っているかもしれない。従って「リハビリテーション」の目的は、彼らの統一教会との心理的関係を完全に絶つことにある。この目的を達成するため、彼らはプロテスタントのキリスト教教義を学んで、統一教会の宗教教義の間違いと言われるものの理解を確たるものにしなければならないのである。

被害者の一人である美山きよみは棄教を強要され、「リハビリテーション」プロセスの一環として、別の監禁被害者である後藤徹を訪問させられた。彼女の陳述書は、後藤徹の民事裁判に証拠として提出された。
私は1998年に後藤さんの部屋を訪問しました。元信者の方がドアをノックすると、後藤さんのご家族が重い錠を外して私たちを中に入れてくれました。そしてすぐに内側から鍵をかけました。

宮村が批判の言葉を浴びせ続ける間、後藤さんは終始うなだれていました。

私たちが部屋を出ようとすると、後藤さんのご家族が玄関の錠を開けてくれ、外に出るやいなや再び錠を掛けました。・・・

後藤さんは下を向いていました。説得の最中は張りつめていましたので、私までひどくストレスを覚えました。目を伏せた後藤さんの姿を見て、本当に気の毒に思いました。私は後藤さんに何も語れませんでした。宮村の脱会説得の手助けになるような言葉も一切言いたくありませんでした。


後藤徹の陳述書には、彼に対し強制的脱会説得を行った専門家の一人(松永牧師)の指導マニュアルが添付されており、その中で彼は両親が「子供の外出を許可する」前に充たすべき判定基準を示している。他の統一教会信者の名前を自分から話し、彼らの「救出」に助力する意思があるかどうかが、監禁されている信者が解放されるための判断基準の中に入っている。信者がキリストの名によって祈るようになったかどうかも、判断基準の一つである。

添付されたすべての事例によると、様々なプロテスタント教派の牧師らが強制下で「説得」及び「リハビリテーション」を行う際、彼らの信仰について述べ、統一教会の誤りと間違った聖書解釈を示そうとするものであったことが明らかである。

寺田こずえが録音した通話の中で高澤牧師は、自分は親らが求めるので監禁と「説得」を将来においても続けると述べ、さらに、「私が信じているイエス様の御名が汚されてるのでねぇ、自分が一クリスチャンとして、そういったことってのはどうしてもね、あのー、我慢できないことでもあるし。どうしてもそのことのためだったら真実を宣べ伝えながらね、証しをしていかなくちゃいけないという、そういうキリストの証人という意味でやってるんですよぉ。」彼は「本当のイエス様を、みなさんに信じていただきたい」と付け加えている。
(§ 334-336)

最近の被害者の人であるM・ケイイチは、いわゆるカルトメンバーのための「リハビリテーション・センター」である「いのちの家」に連れていかれたと証言し、以下のように説明している。
最初は聖書の創世記を読んでキリスト教の神観、罪観、メシヤ観を聞かされ、次いでイザヤ書を読んでいましたが、両親から(強制的脱会説得の専門家に対して)統一教会や文先生のことを知りたいとの要求があり、彼女は急遽、統一教会と文先生に関する話題に変えました。内容としては、教義面における誤りもありましたが、文師に関するスキャンダル的な内容が中心でした。最初から最後まで、それは教会の非難にほかなりませんでした。


もう一人の被害者である元木恵美子は、キリスト教会の建物そのものに監禁された。彼女はそこに13日間監禁され、教会施設の中に両親の見張り付きで閉じ込められているのを警察に発見された。彼女の韓国人の夫が韓国大使館に通報したため、警察は彼女を警察署にいた夫のもとに連れて行かなければならなかった。土崎聖書キリスト教会での監禁に関し彼女は、「同室には同教会の松山裕牧師が来て、自分の教派の考えが絶対に正しいものだという前提で一方的な統一教会批判を行いました」と報告している。

しかし、警察は自分の教会に彼女を監禁した同牧師に対して、彼女と共に警察署に同行するよう求めなかったし、いかなる捜査も行われず起訴も行われなかった。


III. 品位を傷つける扱い


「保護」と「説得」の全過程に、品位を傷つける扱いが含まれている。

言葉による攻撃と不安定化はその一部である。一例として、寺田こずえは自分の強制的脱会説得の専門家について次のように報告している。「高澤はそれ以降、11月下旬頃までは、ほぼ毎日やって来て2時間ほど滞在し、私に対し脱会強要を行いました。その中で、高澤は『知恵遅れ』『精神異常者』『人も殺すような人間だ』『6月のナメクジみたいな顔しやがって』などと言って私に人格攻撃を行いました。」

身体的虐待もその一部である。まず、拉致は身体的暴力である。それは被害者たちが多くの人々に囲まれ、抵抗しても取り押さえられ、ワゴン車に強制的に乗せられて見知らぬ監禁場所へと連れて行かれるからである。

次に、監禁と「説得」には品位を傷つける扱いが伴っている。

最近の事例では、拉致されて3回暫定的に棄教したK・ミユキは、以下のように身体的攻撃を報告している。

彼ら(強制的脱会説得の専門家)が来る前に、父や姉から反対情報を真剣に検証しないといって、激しく罵られた。姉からは背中を殴打されたり、髪をつかんで振り回されるという暴行を何回か受けた。

美山きよみの申立書を読むと、彼女が2年7か月に及ぶ2回目の監禁の間に受けた扱いをよく理解できる。
私は監禁のために準備されたアパートに連れて行かれ、アパートの奥の小さな4畳半の部屋に閉じ込められました。玄関ドアは,チェーンと鍵によって厳重に施錠されていました。窓にはワイヤーで補強されたガラスが使われており、打ち破ることは不可能でしたし、開くことができないように固定されていました。そして外からも内からも見えないようにセロハンのようなもので覆われていました。

私はショックと憤りとで,「強制的脱会説得の専門家」とも両親とも6ヶ月間、一切口をきかなくなりました。私は6ヶ月間一言もしゃべらなかったので、私の弟は怒り出しました。彼は私の髪の毛をつかみ、私の頭を壁に何度も繰り返し打ち付けました。そして彼は私を脅して言いました。「お前は強制的脱会説得の専門家と話さなきゃだめだ。」私は恐ろしくなって抵抗をやめ、強制的脱会説得の専門家と話し始めました。(…)

私は長い間話さなかったので、私の口の筋肉はうまく動きませんでした。私はしゃべれなかったのです。母音が思うように出てきませんでした。そして「強制的脱会説得の専門家」の宮村氏は私がうまくしゃべれないのが気に入りませんでした。彼は私の髪の毛をつかみ、台所に連れて行って、私の頭を流しに押し込みました。彼は水道の蛇口をひねって、「口を洗え!」と言いました。その日から彼の本当の強制的脱会説得が始まり、3か月間続きました。彼は私の信仰を破壊しただけでなく、人格も破壊しました。それは精神的・肉体的拷問でした。


しかし、品位を傷つける扱いの最も非道な例は、後藤徹氏の事例である。

彼は2回目に12年5か月にわたって監禁された。監禁されて8年が経ったとき、彼は抗議のハンガー・ストライキを決意した。3度目のハンガー・ストライキが終わったのち、彼の家族は報復として彼を飢えさせた。彼は以下のように報告している:
ところが、その期間(三回目のハンガー・ストライキ)終了後、食事を出してもらえず、私が頼み込んだ末、家族は重湯少々とポカリスエットを薄めたものを出すようになりました。このような流動食のみの食事が70日間続いたため、私の体は痩せこけ、餓死寸前の人のようになりました。私は家族等の目を盗んでは、炊飯前の水に浸してある生米を少しずつ抜き取って食べ、餓死を免れました。2度目に頼んでようやく、彼らは粗末な食事を出すようになりました。そしてこの罰は2008年2月10日に私が監禁から解放されるまで続いたのです。


12年5か月に及ぶ監禁の後、彼がどうしても棄教しないことから、彼の家族は強制的脱会説得にかかる経費全般のことを考慮し、彼を着の身着のままの状態で玄関から追い出したのであった。同日、彼は栄養失調、貧血、筋肉の衰弱と委縮と診断され、入院した。彼の身長は182センチであったが、体重は52キロであった。しばらくの間、彼は自力で立つこともできない状態であったが、リハビリテ―ションを続け、2か月後に退院した。

彼は極度の栄養失調状態にあったが、これは彼がハンストをした結果ではなく、断食後の2年弱にわたる食事制裁のためであった。彼は33歳のときから監禁され、解放されたときには既に44歳になっていた。

彼が病院で集中的な治療を受けていたときに彼を診察した医師は、診断書の中で「このような状況は家族からの虐待にあたり、生命に危険の及ぶレベルと判断し、巣鴨警察に届け出た」と述べている。しかしながら、警察は取り調べを開始せず、医師の報告と数多くの証拠が提出されたにもかかわらず、彼の刑事告訴は嫌疑不十分を理由に不起訴となった。


IV. 女性に対する暴力

ほとんどの事例は女性に関するものであり、添付した事例も10人中8人が女性である。拉致監禁のいくつかは、彼女たちが同じ信仰を持つ男性と婚約する祝福式に参加する前か、あるいは祝福式に参加した後で、法的に結婚する前に行われた。既に結婚した後に行われた事例もある。

統一教会の祝福式は、しばしば「集団結婚」という誤ったレッテルを貼られてきた。しかしながら、日本においては、祝福式は法的な結婚式を意味しない。それはカップルが誓いを交わし合う祝福式なのである。それに引き続いて聖別期間があり、床入りして結婚を成立させるまでは、カップルは性的関係を控える。その後、カップルは入籍を済ませ、一緒に住み始める。これが「家庭の出発」である。添付の陳述書において、「家庭の出発」は、カップルが実際に一緒に住み始めて家庭を築くこの時のことを意味している。

添付の陳述書で証言している8名の女性の中で、一人(I・ノブコ)は祝福式に参加して婚約する直前であったが、彼女は参加の阻止と棄教のために拉致監禁された。他の5人は既に結婚していた。

そのうちの一人の美山きよみは、解放の条件として、婚姻を無効にするよう要請された。彼女は夫に会うことも話すことも許されず、ただ署名すべき書類を渡された。彼女の婚姻無効の手続きが完了し、彼女が最終的に2年7か月間の監禁から解放されたとき、彼女は心身ともにぼろぼろになっていた。

Y のケースでは、父親が、統一教会の信者であった自分の妻と2人の娘に対して強制的脱会説得を行うことを決意した。彼は母親から始め、彼女に対する強制的脱会説に成功した。その母親が、今度は娘であるYに対する強制的脱会説得に加担した。彼女は後に後悔し、後藤徹の裁判において娘を拉致監禁したことを証言した。それは、Y、彼女の母親、及び後藤徹に対しては、同じ強制的脱会説得の専門家である松永が関わっていたからである。

彼女は、52歳の時にどのように監禁されて信仰を棄てるよう説得されたかを陳述した。「1992年5月頃、『やまげん』店内の裏口付近にいたとき義理の弟が裏口からから店に入ってきて『あんたを姨捨山に連れて行く』などと言い出しました。そして私を車に乗せて山の中のマンションに連れて行きました。」そして彼女は監禁され、福音派のキリスト教会の松永牧師から数週間にわたって説得され、信仰を棄てた。

そして松永牧師の助言に基づき、彼女とその夫は娘 Y の強制的脱会説得へと向かった。Yは妊娠5ヶ月を越えており、彼女の母親は娘の拉致の様子を以下のように記している。「Yは『行かない、行かない』と叫んで必死に抵抗しましたが,妊娠5ヶ月で思うように動けなかったこととから、多勢に無勢でいともたやすく車に押し込められました。私達はYを車で新潟市のマンションに連れて行き,4階の一室に監禁しました。」

Y は3ヶ月間監禁され、堕胎をするよう圧力をかけられた。彼女の家族は、妊娠5ヶ月を過ぎても堕胎手術をしてくれる先生を手配した。彼女は力づくで中絶させられるという恐怖と不安に襲われ、赤ん坊に何が起こるのかを思って悩み苦しんだ。彼女は、統一教会には帰らないという声明を強要された後に、妊娠9ヶ月で解放された。

米国で結婚したが、両親にそのことを告げていなかった美津子アントールは、彼女が統一教会のメンバーと結婚していたことを知った強制的脱会説得の専門家から叱責され、非難された。彼女は以下のように陳述している。

清水牧師は「お前は本当に大嘘つきだ」と怒鳴り、「脱会届を出し、祝福破棄の文書を書け」と言いましたが、私は拒否しました。清水牧師は「祝福を絶対壊してやる」などと言いながら、座布団で3回、私の顔を殴りました。また、私が親と会話している最中、牧師は私の両肩を3回両手で強く叩き、私はその度によろけました。

彼女はまた、家族から受けた身体的虐待を以下のように陳述している。
6月2日、私は精神的に非常な重圧感を感じ、トイレの中に立てこもったり、玄関ドアの前に座り続けたりしました。こうした態度に母は泣き出し、父は怒って私の方に向かってきました。両親は、抵抗する姿勢を見せた私を床の上にうつ伏せに組み伏せ、「これが親の愛情だ」と口々に叫びながら、私の両足をコードで縛りました。私は、犯罪人でもないのに、何故こんなことをされなければならないのかと思い、声を上げて泣きました。

3回の自殺の試みの後、彼女はついに窓からバルコニーに出て、手すりを越えて雨どいのパイプにつかまって脱出に成功した。そのパイプが折れて彼女は2階から落下し、第一腰椎を骨折した。しかし、彼女は自由の身となり、夫と再会してそれ以降は米国に住んでいる。身体的被害のほかに、彼女は不安感、不眠、自律神経失調状態が認められると診断され、PTSD(心的外傷後ストレス障害)」の治療を受けた。

元木恵美子の事例では、彼女は結婚して韓国で家庭を出発した後に、夫を両親に紹介するために初めて二人で彼女の両親を訪ねた際に、夜中に夫の横に寝ているところを拉致された。彼女は突然起こされ、家族によって制圧され、夫が体を押さえつけられて身動きが取れない間に手足を縛られ、窓から担ぎ出されて両親の車に乗せられ、教会施設に連れて行かれて監禁された。彼女は逮捕監禁を理由に刑事告訴したが、不起訴処分とされた。

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以上、甲184-2号証 第四章まで終わり。

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