2014年10月29日

<最終回> 後藤裁判 控訴審 甲185号証:棄教を目的とする拉致と監禁

後藤裁判控訴審 甲185-2号証 を紹介しています。きょうは、その最後の箇所 「勧告事項」 です。

この甲185号証は、「国境なき人権」 が、2013年7月に、国連・自由権規約人権委員会に対し提出したもので、後藤裁判では、その書面の原文(甲185-1)とその日本語訳(甲185-2)が控訴審で提出されました。今回は、その185-2号証の最後の箇所「勧告事項」です。ワードで1ページ半の分量ですので、一気にお読み下さい。

原文は、国連のウェブサイトで閲覧できます。←リンク先をクリック、そして、ワードのロゴをクリックして下さい。

甲185号証の2 目次部分
本記事で紹介するのは、下記赤字部分
序文

1) 日本の国際的義務違反
>> 宗教の自由 (ICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約)第18条)
>> 個人が自由及び安全保障を享受する権利 (第9条) 及び移動の自由 (第12条)
>> 拷問その他の虐待の対象とならない権利 (第7条)
>> 結婚し家庭を築く権利(第23条)
>> 有効な救済を享受する権利 (第2条)及び 差別を受けない権利(第26条)


2) 拉致・監禁及び 強制的脱会カウンセリング(ICCPR 第7、9、12、18 及び 23条違反)
>> 親の当然の心配から拉致決定まで
>> 拉致監禁の実行
>> 強制的脱会カウンセリング
>> 拉致監禁の結果
>> 12年5ヶ月にわたり監禁された後藤徹氏の場合


被害者保護に対する警察の失敗 (ICCPR第2、18及び26条違反)
>> 警察が対応を渋った事例
>> 警察が被害者への語り掛けを怠った事例
>> 警察の介入が拉致被害者の解放に役立った事例
>> 警察が加害者側に味方した事例
>> 統一教会員が警察を信頼できなくなった事例


4) 刑事免責の継続 (ICCPR第2、18及び26条違反)
>> 加害容疑者に対し刑事訴訟が為された事例が皆無
>> 民事訴訟


勧告事項


以下、甲185号証の2 結語部分 「勧告事項」:
読みやすくするため、段落間に行をあけたり、文中、色を加えたり、枠をつけたり等の作業を行いましたが、文章自体は、裁判所に提出された原文のままです。
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勧告事項

HRWF は日本が以下の勧告事項を履行することによってICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約)締約国としてその国際的義務に合致する実践をもたらすことができると信じる:

有効な救済を享受する権利(ICCPR第2条)と併せて、個人の自由と安全保障を享受する権利(同第9条)、移転の自由(同第12条)並びに宗教の自由を享受する権利(同第18条):
• 日本はパリ原則に準拠して国立人権機関を創設し、人々に改宗を強制する目的からの拉致及び自由の奪取ゆえの信教の自由の侵害を含む個人の人権侵害を調査する権限を 同機関に賦与すべきである。

• 日本はICCPRの第一選択議定書に署名し批准すべきである。

• 日本の政府当局は将来において平和的な新宗教運動の会員に対して非国家主体による暴力行為または脅迫及びその他の圧力から効果的に保護する為の戦略を開発すべきである 。

• 警察は棄教目的の為の拉致行為の申し立てに対し迅速に行動し、失踪者の居場所を突き止め、その本人に対し機密保護が保証される状況下で彼ら自身の意志によって閉じ込められているのかを確認し、必要に応じて拉致被害者を救出する緊急措置を取るべきである。

• 警察庁は棄教目的の為の強制監禁を含む事件が警察によってどのように扱われてきたのかについての独立の内部的再調査、及びこれらの犯罪についての追跡調査並びに過去においてかかる調査を始めることができなかったのかについての調査を行うべきである。

• 自らの責務を無視したり或いは犯罪加害者と共謀・結託したことが判明された警察官がいる場合は、それらを全て法に照らし処罰すべきである。

• 棄教目的の拉致の被害者が刑事訴訟を起こす時には、警察及び司法当局はその申し立てに対する独立で公平な徹底的調査を即座に実行し、申し立てられた加害者を法に照らし処罰すべきである。もしも検察当局が申し立てられた加害者を告訴しないことを決定するならば、その理由について詳細な説明が原告に対し為されるべきである。

• 警察は棄教関連の拉致の報告に対し如何に的確に対応すべきに対する訓練を受けるべきである。

• 国会は、被害者、警察・司法当局および国際的な人権専門家、ならびにディプログラミングに対して変化してきた欧州人権裁判所や欧米各国裁判所の法的基準に詳しい人権弁護士らを招いて公聴会を開くべきである。

• 拉致・監禁の被害者たちに公式に謝罪すべきである。


有効な救済を享受する権利(第2条)及び拷問その他の虐待を受けない権利(第7条):
• 棄教目的の強制監禁に関連した家族による身体的虐待に関する訴訟がその被害者によって提起された場合は、その申し立てられた内容に対し独立かつ公平な徹底的調査が為されるべきであり、その加害者は法に照らし処罰されるべきである。


信教の自由 (第18条):
• 日本は宗教または信仰の自由を享受する権利には改宗する権利及び改宗を強制されない権利も含まれ、その双方とも無条件に保護されることを国家の法制度の中で明確にすべきである 。

• 警察は宗教的自由に関しての日本の国際的義務についての訓練を受けるべきであり、その訓練は特に、宗教または信仰の自由を享受する権利はその適用において伝統的な宗教にのみ制限されるものではなく、支配的な既存の宗教団体の一部から敵意を受けているものも含めて平和的な新宗教運動にも適用されることを詳細に教えるものでなければならない。

• 警察と司法当局は国民の子女の宗教的実践に対しその家族が取ってよい措置と取ってはならない措置について関連の法律と明確なガイドラインを国民に知らしめるべきである。

• 政府上級官僚は改宗目的の誘拐と強制監禁に対し公式に反対を表明し、かかる行動は犯罪であり信教の自由に対する人間の権利を侵害するものであることを説明すべきである。


差別を受けない権利 (第26条):
• 日本は改宗者が恐怖や差別に晒されずに通常の生活ができる社会的風土の形成を促進すべきである 。

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以上、甲185-2号証終わり



これまで、6回にわたり、甲185-2号証を掲載してきたが、この甲185-2号証は、「国境なき人権」 が作成し、2013年7月に、国連・自由権規約人権委員会に提出されたものである。「国境なき人権」 は、2014年6月にも、報告書を作成し、同人権委員会に提出している。残念ながら、後者(2014年6月)の報告書は、書類提出の期限のためか、後藤控訴審裁判には、提出できなかったようだ。その2014年6月の報告書には、2013年7月以降の、拉致監禁の事例を挙げながら、日本の拉致監禁による人権侵害を、国連・人権委員会に訴えている。2013年7月の報告書は、このブログ内ですでに紹介しているので、以下のリンクを参考にして頂きたい。

「国境なき人権」 2014年6月の国連人権委員会宛の報告書
★「国境なき人権」怒りの反論 (上) - 国連を舞台、日本当局に
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402124570.html

★「国境なき人権」怒りの反論 (中) - 監禁擁護の千葉県警
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402272459.html

★「国境なき人権」怒りの反論 (下) - 後藤判決の賠償額は 被害に対し不均衡
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402448735.html


尚、2014年7月にジュネーブ国連本部で開催された日本に関する自由権規約人権委員会の最終報告書には、日本の拉致監禁・強制改宗に対する懸念が表明され、日本に対する勧告の一つに盛り込まれた。この最終報告書は、後藤控訴審にも、ぎりぎり間に合ったようで、甲190号証(甲190-1:人権委員会の最終報告書、甲190-2: 甲190-1の抄訳)が提出されている。

自由権規約人権委員会最終報告書
★国連: 有効な手段を講ずるべきと、強制改宗で日本当局に要請
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402556376.html


国連・人権委員会の最終報告書に対して、全国霊感商法対策弁護士連絡会 (全国弁連) が反応し、声明を発表した。全国弁連が声明を出さざるを得ないほどのインパクトがあったのだろう。しかし、その声明は、あまりにも、おそまつ無残なものだった。

全国弁連声明文
★全国弁連声明文への批判(1)- 中心メンバーの素顔
http://humanrightslink.seesaa.net/article/403089192.html

★全国弁連声明文への批判(2)- 初歩的ミスの欠陥声明文
http://humanrightslink.seesaa.net/article/403140270.html

★全国弁連声明文への批判(3)- 世界的に客観性のある 「国境なき人権」 レポート
http://humanrightslink.seesaa.net/article/403511860.html

★全国弁連声明文への批判(4)- 今夜も笑いをありがとう
http://humanrightslink.seesaa.net/article/404169709.html


「国境なき人権」 の、報告書作成に深く関わっている、フランス在住の国際人権弁護士のパトリシア・デゥバル女史は、後藤控訴審裁判に、意見書を提出している。この書面は、「拉致監禁被害者後藤徹氏の裁判を支援する会」 のブログ 「拉致監禁by宮村の裁判記録」 で、紹介されている。

パトリシア・デュバル弁護士の意見書
★パトリシア・デュバル弁護士の意見書@ー後藤氏に対して認められた損害賠償は甚だしく低額である。
http://antihogosettoku.blog111.fc2.com/blog-entry-278.html

★パトリシア・デュバル弁護士の意見書A−日本政府は、国際的人権規範と勧告に違反した。
http://antihogosettoku.blog111.fc2.com/blog-entry-280.html


後藤控訴審判決が、2週間後の、2014年11月13日(木)に出される。第一審 2014年1月28日 の判決以降に、ジュネーブの国連本部で、自由権規約委員会で大きな動きがあった。その内容は、原告側より、控訴審で提出された。ヨーロッパの人権活動家、人権機関の、日本の拉致監禁問題に対する姿勢は首尾一貫している。そのような動きが、後藤控訴審裁判に影響を与えてくれればうれしい。

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posted by 管理人:Yoshi at 09:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 後藤民事裁判提出資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
<第一審 2014年1月28日 の判決以降に、ジュネーブの国連本部で、自由権規約委員会で大きな動きがあった。(中略)。ヨーロッパの人権活動家、人権機関の、日本の拉致監禁問題に対する姿勢は首尾一貫している。そのような動きが、後藤控訴審裁判に影響を与えてくれればうれしい>

本当に、二度と拉致監禁事件が起きないように、厳しい判決を望みます。

ところで、yoshiさんは控訴審判決に併せて、帰国(来日)されるのでしょうか。
もし、そうでしたら、また、お会いしたいですね。
Posted by みんな at 2014年10月29日 17:42
> ところで、yoshiさんは控訴審判決に併せて、帰国(来日)されるのでしょうか。

みんなさん。はい、そのつもりで準備を進めております。2週間後には、東京にいるはずです。もう、少し近くなったら、私のブログ上でも、ご案内いたします。お会いできるのを楽しみにしています。
Posted by Yoshi at 2014年10月29日 18:36
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