2014年08月09日

「国境なき人権」怒りの反論 (下) - 後藤判決の賠償額は 被害に対し不均衡

全国弁連の声明に対する批判の連載中ですが、先に、この記事をアップしたいと思います。次回から、再び、その声明への批判に戻ります。

2014年6月に、国境なき人権が、国連自由権規約人権委員会に提出した報告書の最後の部分で、国境なき人権の、後藤裁判判決への評価です。今回の、紹介部分は、下記の 「やり取り」 の中の、 赤 (太字) で示しています。

国連自由権規約人権委員会での、拉致監禁問題でのやり取り:
委員会 = 国連自由権規約人権委員会、被害者の会 = 全国 拉致監禁・強制改宗被害者の会
2013年7月
■国境なき人権: 33ページの報告書、人権委員会宛提出
■被害者の会: 29ページの報告書、人権委員会宛提出

(これらは、まだ、日本語では紹介できていません)

2013年11月14日
■人権委員会: 日本の「問題点リスト」を発表
(人権委員会が、日本当局に対し、調査・起訴されていない拉致・強制改宗・強制棄教の案件についての報告についてコメントを求める)
日本政府の拉致監禁に対する無関心が露呈 - ジュネーブ国連本部

2014年3月6日
■日本当局: 「そのような案件は知らない」と返答
日本政府の拉致監禁に対する無関心が露呈 - ジュネーブ国連本部

2014年6月
■国境なき人権:日本当局の返答に対する反論、拉致監禁・強制改宗問題の最新情報の提供
(上) 「国境なき人権」怒りの反論 (上) - 国連を舞台、日本当局に
(中) 「国境なき人権」怒りの反論(中)- 監禁擁護の千葉県警
(下) 今回の記事: 「国境なき人権」怒りの反論(下)- 賠償額は、被害に対し不均衡

■被害者の会:日本当局に対する返答、と最新情報
(このブログでは、まだ紹介できていません。)

2014年7月15・16日
■人権委員会で日本の審査が行われる。
国連: 有効な手段を講ずるべきと、強制改宗で日本当局に要請

2014年7月24日
■人権委員会が、最終報告書発表
国連: 有効な手段を講ずるべきと、強制改宗で日本当局に要請


記事種類:  国境なき人権の国連人権委員会への提出書類(2014年6月)
記事タイトル:  日本: 改宗目的の拉致・監禁 最新情報
出典元:  http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/SessionDetails1.aspx?SessionID=626&Lang=en
(Japan の箇所、Info from Civil Society Organizations (for the session)の左端の [-] シンボルをクリックすると、行が拡張される。Human Rights Without Frontier' (HRWF) の右端の View Document をクリックすると、原文が公開されている。今回の箇所は、その報告書 最後の部分で、後藤徹裁判の判決について書かれている。日本語訳 by Yoshi Fujiwara )

CIVIL COURT JUDGMENT IN THE CASE OF TORU GOTO
後藤徹民事裁判の判決

On 28 January 2014, Civil Division No. 12 of Tokyo District Court rendered a decision in a civil case brought by Toru Goto, whose confinement for over 12 years constitutes perhaps the most egregious known example of abduction and confinement for the purpose of religious de-conversion in Japan. The court’s ruling has been appealed by both Toru Goto and the defendants.

2014年1月28日、東京地方裁判所 民事部 民事第12部において、後藤徹氏によって起こされた民事裁判の判決が言い渡された。後藤氏の監禁は12年続き、日本の宗教的改宗目的の拉致監禁のもっとも知られた例である。判決に対し、後藤徹氏、被告側 双方が上告した。


- Compensation disproportionate to the damages suffered
- 損害賠償は、被った被害に対して不均衡


The Court confirmed that Toru Goto’s “freedom of movement” had been “greatly restrained against his clearly expressed will. He was placed in an environment in which contact with those outside the residence was not allowed, his mind and body were unfairly constrained and he was coerced to renounce his faith.”

裁判所は、後藤氏の ”行動の自由” は、”彼の明確な意思に反して、重大に制約され、外部世界と連絡を取るのことが許されない状況下に置かれ、彼の心身は不公平に制約され、彼の信仰を破棄するよう強要された” と認定した。

The Court affirmed that Toru Goto’s confinement by his relatives was a tort for the explicit purpose of forcing him to renounce his faith.

裁判所は、後藤徹氏の親族らによる監禁は、彼の信仰を一方的、強制的に放棄させる目的のための不法行為と認定した。

However, consistent with a number of other civil cases brought by the victims of similar abductions in recent years, the Court showed sympathy with Toru Goto’s relatives who had illegally confined and deprived him of liberty. The Court pointed out that they had acted on the basis of their “love” and “concern” for Toru Goto, thus in a sense exonerating the defendants and signaling to other families that coercive actions likewise based on lofty motives would be forgiven by the authorities. At the same time, characterizing the motives of the perpetrators in a positive way also justifies low financial compensation to the victims.

しかしながら、過去に、似たような拉致の被害者によって引き起こされた、他の民事裁判にならい、裁判所は後藤氏の自由を剥奪し監禁した親族に、同情を示した。裁判所は、親族らは、後藤徹氏に対する ”愛情”や ”心配”の気持ちからの行動だったと指摘し、それ故、ある意味で、被告らの責任を免除し、他の家族に対し、高尚な動機に基づく強要的行為に対しては、関係当局は許してくれるだろうというシグナルと送った。同時に、加害者の動機を肯定的に特徴づけることは、被害者に対する、低い損害賠償額を正当化することになる。

The Court granted Toru Goto a sum of 4.839,110 Japanese Yen (JPY), or approx. 34.800 EUR, which includes 839.110 JPY (approx. 6.000 EUR) for medical costs and legal fees, as well as 4.000,000 JPY, or approx. 28.800 EUR, for mental suffering, which comes to only 2.333 EUR for each year Toru Goto was illegally confined in an effort to force him to recant his faith.

裁判所は、精神的苦痛に対して、400万円(2万8800ユーロ)、治療費・弁護士費用に83万9110円(約6000ユーロ)、合計483万9110円(約3万4800ユーロ)の支払いを後藤氏に認めた。慰謝料をみれば、信仰を放棄させられるために監禁された後藤徹氏にとっては、毎年たったの2333ユーロ(約32万円)の賠償ということになる。

While the Court acknowledged “tremendous” mental strain as well as severe physical problems resulting from Toru Goto’s deprivation of liberty, HRWF believed the remedy offered to be inconsistent with these determinations, and thus with Article 2.3 of the Covenant, which mandates effective remedies. The compensation as determined by the Court puts a very low price not only on his liberty as an individual, but also the “opportunity cost” of being denied the ability to work, build a financial foundation for a family, or contribute to society.

裁判所は、後藤徹氏の自由を剥奪されたことによる、深刻な身体的問題に加えて、”多大な”精神的苦痛を認めた一方で、示された賠償額は、裁判所の判断、そして、効果的な救済措置を定めた、自由権規約2条3項(注 1)に相容れないと、国境なき人権は信じている。裁判所によって示された賠償額は、個人としての自由に対してだけでなく、働く能力、家族のための経済的基盤、社会への貢献を否定された ”機会費用(逸失利益)(注 2) (opportunity cost)”に対しても、きわめて低い。

<注 1 自由権規約2条3項
3 この規約の各締約国は、次のことを約束する。
 (a) この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること。
 (b) 救済措置を求める者の権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。
 (c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。 >


注 2: 機会費用 (opportunity cost): 法律用語では、逸失利益。この場合は、後藤さんが監禁されなかった場合に、得られたと考えられる利益。ウィキペディア参考)>


- “Deprogrammers” get away lightly
- 簡単に逃げられる ”ディプログラマー”


As detailed in HRWF’s July 2013 submission to the UN Human Rights Committee, Toru Goto’s abduction was organized by Pastor Matsunaga and an associate, Takashi Miyamura. The Court’s decision accurately describes how both Pastor Matsunaga and Takashi Myamura had been engaged for approximately 30 years in unsolicited “exit counseling” for members of other faiths, focusing largely on converts to the UC. The Court referred to evidence in the form of written memoranda detailing methods for abducting targeted individuals, and for applying coercive psychological and physical pressures. The methods were used by Pastor Matsunaga, but also shared with his clients, i.e. families of victims.

2013年7月の国境なき人権の国連人権委員会への提出書類に詳述されているが、後藤徹氏の拉致は、松永牧師と、仲間の宮村峻氏によって、うまくいくよう準備された。松永牧師と、宮村峻氏の双方が、他の信仰を持っている信者、主に統一教会への入信者のための、一方的な ”出口カウンセリング” におよそ30年間従事してきたことを、裁判所は、正確に述べている。裁判所は、標的にした個人の拉致のための、詳細を記したメモの形で残された証拠に言及した。その手法は、松永牧師により使われたが、彼の、顧客である被害者の家族にも共有された。

Although the Court confirmed that the treatment to which Toru Goto was subjected was generally consistent with the practices established by these documents, the Court absolved Pastor Matsunaga on the basis that he had not been involved in major segments of the Goto confinement, nor could it be established that the abuse suffered by Toru Goto resulted from supervision of the process by Pastor Matsunaga. Thus, neither Pastor Matsunaga, nor his church, was found to share any of the tort liability in the case. As regards the role of Takashi Miyamura, the Court found he had been involved in coercive actions against other members of new religious groups, and that he shared limited tort liability with Toro Goto’s relatives. The Court ordered Takashi Miyamura to pay damages of 967.822 JPY, or approx. 7.000 EUR.

裁判所は、後藤徹氏の受けた扱いは、全般的に、これらのメモ書きに添ったものとの認定をしているが、松永牧師は、後藤氏の監禁の主要な部分に関係しておらず、また、後藤氏の受けた虐待は、松永牧師による一連の行為の指示の結果からきたということは言えないとした上で、松永牧師に対する不法行為を免責した。このように、松永牧師も、彼の教会も、この裁判での損害賠償責任を逃れることができた。宮村峻氏の役割に関しては、新宗教運動メンバーに対する強要行為に関与し、後藤徹氏の親族と協同して、わずかな損賠賠償金を科せられた。裁判所は、宮村峻氏に、損害賠償金、96万7822円(約7,000ユーロ)を支払うよう命じた。

In finding only limited liability in only one of the “deprogrammers”, the Goto decision thus perpetuates a highly problematic judicial approach found in most other similar cases in Japan. To date, civil courts have only in two cases considered attempts to force someone to change their religion unlawful. In all other cases the courts either did not examine whether the plaintiffs had suffered harm from being subjected to unsolicited “exit counseling“ or they found that unsolicited “exit counseling“ was legitimate under certain circumstances. HRWF is concerned that the failure to unequivocally condemn this practice may originate from a discriminatory attitude towards the UC.

ごくわずかの賠償金が、”ディプログラマー” の一人だけに科せられたことは、後藤判決は、日本の他の似たような例に見られるように、きわめて問題のある司法の姿勢を持続させるものである。今日まで、民事裁判で、強制改宗の試みを不法行為と認定してのは、2件のみだけである。他の民事裁判で、裁判所は、原告が、一方的 ”出口カウンセリング” による損害を被ったかどうか検証しなかったか、または、一方的な ”出口カウンセリング” は、ある状況のもとでは、合法的であるという判断を下してきた。この行為を明確に糾弾することのできなかったことは、統一教会に対する差別的態度に根ざしている可能性があると、国境なき人権は憂慮を表明する。

Regrettably, despite having validated many of the central claims of the victims of abductions for the purpose of forced religious de-conversion, the decision fell far short of fully acknowledging the culpability of either Toru Goto’s relatives or the “deprogrammers,” and served to belittle the gravity of the injustice he suffered. The decision does not alter the conclusion that Japan is seriously in violation of the Covenant in respect to protecting freedom of religion. On the contrary, the decision gave legitimacy to the illegal actions of Toru Goto’s family, and for the most part exonerated those outside his family who participated depriving him of his freedom and subjecting him to coercion. The decision can thus be taken as promoting the climate of impunity that has allowed similar abductions to continue.

残念なことに、強制改宗目的の拉致被害者の中心的主張は、正当性が立証されたにも関わらず、判決は、後藤徹氏の親族の責任に対しても、”ディプログラマー”の責任に対しても、完全に認定するには程遠いもので、後藤氏が受けた不公平の重大さを軽く扱った。この判決は、日本が、宗教の自由の保護に関して、著しく自由権規約に違反しているという結論を変えるものではない。反対に、その判決は、後藤徹氏の家族、そして、彼に強要を行い、彼の自由を奪ったことに参加した家族以外の免責された人々の不法行為に対して、正当性を与えてしまった。
<完 - 国境なき人権 2014-06 レポート>



この記事で、国境なき人権が、2014年6月に人権委員会に提出したレポートの紹介の連載が完了した。この報告書は、自由権規約に関しての日本の審査(7月15日・16日)の、1ヶ月前に提出されたものだ。このレポートには、千葉で未だに行方不明中の、石橋正人君の安否確認のため、はるばる、国境なき人権代表が来日し、実際に千葉県警に出向き、交渉を行った過程が含まれている。

全国弁連の声明に次のような箇所がある。
http://www.stopreikan.com/shiryou/seimei_20140801.htm
(注:HRWF = 国境なき人権)
そこで指摘されているレポートは、HRWFと称する団体のものなどを指すと思われますが、HRWFのレポートで報告されている最近の人権侵害例とする3件は、いずれも統一協会信者についてのものです。そのうち2件は信者が統一協会との連絡を断って家族と話し合った結果脱会したというものです。もう1件については、なぜ統一協会とだけ連絡がとれなくなっているのかについて、事実関係が明らかにされていません。統一協会側の一方的主張に基づいて作成されたものであることは明白です。
<全国弁連の声明より>

はからずも、全国弁連は、「国境なき人権のレポート」にやられたことを白状している。全国弁連が声明を出さざるを得なくなったその要因となったレポートを、まだ読んでおられない方、是非、下記のリンクから。全国弁連の皆様も、是非、どうぞ。

「国境なき人権」怒りの反論 - 三連載のリンク先
★「国境なき人権」怒りの反論 (上) - 国連を舞台、日本当局に
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402124570.html

★「国境なき人権」怒りの反論 (中) - 監禁擁護の千葉県警
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402272459.html

★「国境なき人権」怒りの反論 (下) - 後藤判決の賠償額は 被害に対し不均衡
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402448735.html


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posted by 管理人:Yoshi at 20:25| Comment(3) | TrackBack(0) | 国連自由権規約人権委員会 2014 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Yoshi San ありがとうございます。このレポートがそのまま後藤さん側からの提出物になって欲しい。
Posted by Etsuko at 2014年08月10日 13:30
<示された賠償額は、裁判所の判断、そして、効果的な救済措置を定めた、自由権規約2条3項に相容れないと、国境なき人権は信じている。裁判所によって示された賠償額は、個人としての自由に対してだけでなく、働く能力、家族のための経済的基盤、社会への貢献を否定された ”機会費用(逸失利益) (opportunity cost)”に対しても、きわめて低い>
<ごくわずかの賠償金が、”ディプログラマー” の一人だけに科せられたことは、後藤判決は、日本の他の似たような例に見られるように、きわめて問題のある司法の姿勢を持続させるものである>

この国連人権委員会への提出書類を日本当局、司法関係者が目にして、どう考えるか。
多くは期待できないが、せめて良心の呵責を感じてもらいたい。

このような問題のある司法を改革するため、後藤裁判の控訴審で、自由権規約に則った判決が出るよう祈ります。
Posted by みんな at 2014年08月15日 11:26
Etsuko さん、みんなさん、コメントありがとございます。

来週、8月21日(木)は、後藤裁判控訴審第二回口頭弁論です。結審すれば、今年中の判決になると思います。

Posted by Yoshi at 2014年08月15日 20:56
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