2013年10月28日

米国務省の "確認できない報告" との記述を消失させた「国境なき人権」

前回の記事で、米国務省の国際宗教自由報告書の2010年度版をみた。一番の特徴は、拉致監禁事例の報告に対して、国務省が 「独自には確認できなかった」 という記述を入れたことだ。拉致監禁グループにとっては、この上なく、「広報活動の成果、拉致監禁は捏造」 だと、喜んだことだろう。

2012年10月31日、欧州国連本部にて、国連人権理事会の日本に関する「普遍的・定期的審査(レビュー)」の作業部会が開かれ、それに合わせて、日本の拉致監禁問題を取り上げたサイド・イベントが開催された。「国境なき人権」のフォートレ代表は、次のように語っている。この部分は、米国務省の国際宗教自由報告書を取り上げ、「国境なき人権」 の独自の調査との関連性を示す、興味深い箇所である。

HRWF_chairman.jpg
写真:「国境なき人権」 フォートレ代表

★「国境なき人権」 代表 フォートレ代表のスピーチより
映像 http://vimeo.com/52998023 (40分58秒のあたりから)
日本語訳: http://humanrightslink.seesaa.net/article/305874601.html#more
00:40:58 (英文テキストは省略、必要であれば、上記リンクで確認可能)

この問題を監視してきた、もう一つの関係者は、毎年、世界中の宗教の自由の状況の報告書を発表してきたアメリカ国務省です。毎年、彼らの報告書では、「統一教会によれば、多くの信者が拉致監禁され、強制改宗させられ、ディプログラミングの標的にされている」としましたが、「これらは、確認できていない情報だ」と言いました。

だからこそ、私たちは、私たちの調査に基づき、一つの客観的事実に達したかったのです。その行為が存在したということを証明することでした。その問題の含む社会心理学や法律的なこと等の、すべての観点の完全な研究をすることではありませんでした。私たちは、その行為、誤った行為、間違った行為が存在し、停止させられるべきだということを主張しなけらばなりません。

というわけで、「国境なき人権」による日本の拉致監禁問題の調査は、2011年の夏に、集中的に行われ、拉致監禁に関する報告書 「日本 - 棄教を目的とした拉致と拘束」(英語版) が、その年の暮れも暮れ、大晦日の、12月31日に発表された。国務省報告書の発表日と、「国境なき人権」の発表日を時系列にまとめておきたい。

2010年8月5日:アーロン・ローズ博士等、東京外国人記者クラブで、拉致監禁に関する記者会見
2010年11月17日:国務省、2010年度版発表「拉致監禁は確認できない報告」と記載
2011年7月〜9月:国境なき人権調査団訪日
2011年9月30日:国務省、2010年度下半期版発表「拉致監禁は確認できない情報」と記載
2011年12月31日:国境なき人権、拉致監禁に関する報告書発表
2012年7月30日:国務省、国際宗教自由報告書2011年度版発表「確認できない報告」の記述消失
2013年5月30日:国務省、国際宗教自由報告書2012年度版発表「確認できない報告」の記述消失


★なぜ、12月31日に発表?
今、この記事を書きながら、気が付いたことがある。国境なき人権の報告書の発表日 <12月31日> についてだ。「国境なき人権」 の拉致監禁報告書の発表が、西洋社会では一番忙しい季節、クリスマスの直後、なぜ、大晦日なのか?ということだ。日本でもそうだと思うが、大晦日は、仕事をするような時ではなく、ホリデーの季節である。クリスマスの休暇を終えて、翌年の2012年1月中旬とか、2月になってからでもよかったのではないか? 

「アメリカ国務省の宗教自由報告書を意識したもの」 というのが、私のひらめきである。国務省の報告書には、報告期間というのがあって、2011年度版の報告機関は、その年の1月1日〜12月31日である。もし、発表日が、翌年の2012年1月15日くらいになると、その報告期間内に発表されたものではなくなり、国務省の2011年度版には、取り上げる事ができなくなる。だから、発表日は、12月31日か、それ以前でなければならない。

「国境なき人権」は、そこまで考えて、普通の人は仕事をしない時期に、その夏に行った調査結果を、ぎりぎりまで作業を行い、発表したということだろう。「国境なき人権」 の真剣さを垣間見ることのできる事件だと思う。では、国務省のレポートには、どう反映されたのか?「国境なき人権」の報告書から、7ヵ月後に国務省の報告書が発表された。

★米国務省報告書 2011年度版 (報告期間:2011年1月1日〜2011年12月31日
発表日:2012年7月30日
http://www.state.gov/j/drl/rls/irf/2011religiousfreedom/index.htm?dlid=192631#wrapper
(注 by Yoshi: 以下の3段落は、原文では1段落であるが、読みやすくするため、3つに分けた。)
For several years deprogrammers working with family members have reportedly abducted Unification Church members and members of other minority religious groups. The number of reported cases has declined sharply since the 1990s, but research published in December by the nongovernmental organization (NGO) Human Rights Without Frontiers International maintained that abductions and deprogramming of Unification Church members continue to occur. Other NGOs, however, accused the Unification Church of exaggerating or fabricating these reports.

The Unification Church reported two cases in which church members were abducted during the year as well as three cases of suspected abductions. According to the church, one abductee escaped after five months of confinement and the other was released after three weeks; the three individuals whom church officials suspect were abducted all withdrew from the church. Two other members who reportedly remained confined at the end of 2010 withdrew from the church.

The Unification Church also asserted that cult prevention workshops and campaigns held at universities throughout the country urged students to avoid groups affiliated with the church and contributed to a hostile campus environment for Unificationist students.

これまで何年もの間、家族のメンバーと連携 (work with) してきたディプログラマーが、統一教会の会員や、他の弱小宗教団体の会員を拉致してきたと伝えられてきた。報告されたそれらの事件は、1990年以降、激減したが、(2011年)12月に発表された非政府組織(NGO)「国境なき人権」の調査は、統一教会員に対する拉致監禁は、継続して行われていると断定 (maintain) した。しかしながら、他のNGOは、それらの報告は、誇張と捏造であると統一教会を非難している。

統一教会は、報告期間内に、2件の拉致事件があり、3件の拉致と疑われる事件があったと報告した。統一教会によれば、一人の被害者は5ヵ月の監禁後に脱出し、もう一人は、3週間後に解放された。統一教会が拉致されたと疑っている3名は、全員、統一教会を脱会した。2010年末の時点で監禁されていると報告された他の2名も、教会を脱会したと、報告された。

さらに、統一教会は、"カルト対策" の研修やキャンペーンが日本中の大学で開催され、学生に統一教会に関連した団体に近づかないように呼びかけ、大学キャンパス内での、統一教会信者学生に対する敵意感情を増大していると強く主張 (assert)している。

2011年度版の特徴は、それが発表された時、すでに私のブログで書いたので、その関連部分を、ここにコピーさせて頂く。きょうの記事は、引用が多くて、手抜きではないかと言われるかもしれないが、固いことは言わず、お付き合いを。

★国務省報告書 2011年度版の報告書の特徴
http://humanrightslink.seesaa.net/article/284948839.html
まず、日本語の、(拉致監禁に関する部分の)第一段落を見て欲しい。一番中心となる文章は、「(2011年)12月に発表された非政府組織(NGO)「国境なき人権」の調査は、統一教会員に対する拉致監禁は、継続して行われていると断定した」という文章である。英語では次のようになる。

Research published in December by the nongovernmental organization (NGO) Human Rights Without Frontiers International maintained that abductions and deprogramming of Unification Church members continue to occur.

原文では maintained (断定した)という表現が使われている。insisted (主張した)とか、reported (報告した)とかの言葉ではなく、maintained ということば使われている。Maintain を辞書で引くと、 ”維持する”という意味が、一番に出てくるはずだが、この場合は、「断定した」とか、「断言した」という意味である。

もし、アメリカ国務省が、「国境なき人権」 の出した結論に対して懐疑的であれば、決して「断定した」という表現は使わず、その結論とは、一線を画す意味で、「主張した(insisted)」 とか、単に、「報告した (reported)」とかの言葉を使ったはずだ。

これは、とりもなおさず、アメリカ国務省が、「統一教会員に対する拉致監禁は、継続して行われている」 ということを確信しているということであり、「国境なき人権」 の報告書の正しさを、アメリカ国務省が確認したということである。ゆえに、これまで、よく、国務省レポートで使われていた「独自に、確認はできなかった = could not be independently confirmed 」という表現も消えてしまった

その段落の最後の文章、「しかしながら、他のNGOは、それらの報告は、誇張と捏造であると統一教会を非難している。」 とあるが、これは、あってもなくても、別にどうでもいいような文章で、「こういうことを言ってる人(団体)がいるよ」 ということを書いているだけである。その1年後の、2013年度版では、この記述すら、なくなってしまった。

2012-08-09 追記:
アメリカ大使館(東京)が、国務省の報告書の日本に関する部分を日本語で発表した。

大使館訳の拉致監禁に関する部分だけを、引用させていただく。
http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20120730-01.html (強調 by Yoshi)
 ディプログラマーが家族と協力して、統一教会の会員およびその他の少数派宗教団体の信者を数年間にわたり拉致してきたとの報告があった。報告件数は1990年代以降、大幅に減少したが、非政府組織(NGO)の「国境なき人権」が12月に公表した調査は、統一教会会員の拉致とディプログラミングが継続して発生していると主張した。しかし、統一教会が報告を誇張あるいは捏造(ねつぞう)したと非難するNGOもあった。統一教会は、2011年に同教会の会員が拉致された事例を2件、拉致された疑いがある事例を3件報告した。同教会によると、拉致された会員のうち1人は5カ月間の監禁の後に脱出し、もう1人は3週間後に解放された。統一教会関係者が拉致されたと疑っている3人は全員、同教会を脱会した。2010年末時点でまだ監禁状態にあったと報告されていた別の2人の会員は、同教会を脱会した。統一教会はまた、日本全国の大学で行われたカルト防止ワークショップおよび運動が、同教会の関連団体に近づかないよう学生に呼びかけており、同教会の会員である学生にとっては厳しいキャンパス環境が生まれる一因となったと主張した

大使館訳では、「主張した」が2度出てくるが、最初の 「主張した」 は、原文では "maintained" という言葉が使われ、2度目の主張したは、 "asserted" という言葉が使われている。残念ながら、大使館訳では、これらの言葉 (maintain, assert) の意味が、単に「主張した」と訳したことにより、失われているかもしれない。私の訳では、"maintained" は「断定した」、"asserted" は「強く主張した」とした。

大使館のウェブサイトでも、「*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。」と言っている通り、正文は英語だ。大切なことは、原文でどう表現しているかである。読者の中で、より興味のある方は、私の訳とかも参考にして、原文で、その内容を検証して欲しい。


★"Maintain" が、なぜ "断定" になるのか?
私の日本語訳では "maintained" を "断定した" と訳したが、簡単な説明をしておきたい。maintain というのは、辞書を引けば、最初に出てくるのは、維持するとか、保持するとか そんな意味がまず、出てくる。たとえば、大学入試(英語)の受験生で、maintain の第一の意味を "主張する" と覚えている人はまずいないだろうし、私の経験した限りであるが、maintain を、"主張する" という意味で使う場面には、そんなに数多く当たることはない。

"maintain" から派生した名詞で "maintenance" という単語がある。日本語でカタカナのメンテナンス(英語の発音は:メインテナンス)である。たとえば、精密機械、複雑で巨大な機械、コンピュータのシステムなどの、メンテナンス作業をするためには、それらのシステムを完全に熟知して、的確な判断を下し、それらを修理したり、修復したり、検査できる技術力が必要である。機械のメンテナンスは、そのような知識とか、技術に裏打ちされてはじめて可能になる。

"HRWF(国境なき人権)maintained 〜 " ということは、国境なき人権は、〜の事を、様々な情報、知識、調査、的確な判断力に裏打ちされて主張したということだ。誰かがそう言ってるから、そうだろうとか、たくさんの被害者から報告を受けたので、そうだとか、そんな中途半端な、単なる主張ではないのである。米国務省は、「国境なき人権」 の報告書を、そういう "maintain" という言葉を使って、引用したということだ。

★「国境なき人権」報告書の出現により、国務省レポートに劇的変化
国務省報告書で、2年近くにわたって使われてきた「独自に確認できなかった」という言葉は、第三者による信頼できる独立した報告書が出てきたため、2012年7月で、過去のものになってしまった。要するに、拉致監禁は、独立した根拠により証明されたと、米国務省が結論を下したいうことだ。それに伴い、国務省レポートに劇的な変化がみられた。

2011年度番では「他のNGOは、それらの報告は、誇張と捏造であると統一教会を非難している」との記述が出てくるが、この文言さへも、その翌年の報告書(2013年5月発表)ではなくなってしまった。

2013年度版は、来年2014年の前半には発表されると思う。国務省の報告書は、以前にみた通り、「関連裁判の判決後に取り扱い量が増える」という傾向がある。後藤徹氏の民事裁判の判決は、2013年12月17日なので、次回の国務省レポートには、どんな結果になろうと、取り上げられるはずである。

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posted by 管理人:Yoshi at 22:13| Comment(1) | TrackBack(0) | アメリカ政府レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「私たちは、その行為、誤った行為、間違った行為が存在し、停止させられるべきだということを主張しなけらばなりません」

実に頼もしい言葉です。

しかも…、
その年の報告書に書き加えさせるために、大晦日まで仕事をし、年内に提出した―。

「国境なき人権」の並々ならぬ真剣さが伝わる話ですね。

「国境なき人権」の皆様、yoshiさんら、全世界の人権を愛する人々と共に、12/17の判決を見守り、勝訴をお祝いしたいです。^_^
Posted by みんな at 2013年11月06日 17:48
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