2013年10月21日

米国務省「宗教自由報告書」- 1年8ヶ月の暗黒期

アメリカ国務省の宗教自由報告書内の、日本の拉致監禁問題の取り上げ方、報告書の読み方の解説を行っている。

同じカテゴリーの前回記事で、2008年度版と2009年度版をみた。しかし、その後、別のトピックの記事が入ったりで、このブログに最近来られた方は、以下の記事を参考にして欲しい。

★米国務省「宗教自由報告書」- 日本に関する 「5分の1」 は拉致監禁の報告
http://humanrightslink.seesaa.net/article/371130733.html

★米国務省「宗教自由報告書」- 拉致監禁 2000年前後の動向
 http://humanrightslink.seesaa.net/article/372256576.html

★米国務省「宗教自由報告書」1999-2006:8年連続で拉致監禁問題
http://humanrightslink.seesaa.net/article/374821327.html

★米国務省「宗教自由報告書」2008年・2009年度版
http://humanrightslink.seesaa.net/article/375954435.html

2007年度版では、拉致監禁に関する記述がなくなるが、2008年度版より、拉致監禁問題が、米国務省の宗教自由報告書で再び取り上げられるようになった。前回記事で、2008年度版と、2009年度版の2年間の報告をみてきた。「統一教会が 〜 と報告した」という記述の多い内容だった。

これが、2010年度版ではどう展開していくのか?

まず、2010年度版の国務省の宗教自由報告書の拉致監禁問題を扱っている部分を紹介したい。2011年より、報告期間の変更のため、2010年度の報告書は、2回出ている。

2010年度版 (報告期間:2009年7月1日〜2010年6月30日)
発表日:2010年11月17日
http://www.state.gov/j/drl/rls/irf/2010/148871.htm
For several years deprogrammers working with family members have reportedly abducted Unification Church members, members of Jehovah's Witnesses, and other minority religions. The Unification Church and Jehovah's Witnesses-affiliated organization Watchtower report the number of cases has declined sharply over the last 10 years. However the Unification Church reported five members were abducted during the reporting period. These reports could not be independently confirmed, and some nongovernmental organizations (NGOs) have accused the Unification Church of exaggerating or fabricating these reports.

ここ数年、ディプログラマー(強制改宗家)は信者の家族のメンバーと協力し、統一教会、エホバの証人、他の少数派宗教団体の信者を誘拐しているとの報告が上がっている。統一教会と、エホバの証人(ものみの塔)は、過去10年間において、拉致件数は、著しく低下していると報告している。しかしながら、統一教会は、この報告書の期間内において、5名が拉致されたと報告している。これらのレポートは、独自には確認できなかった。あるNGO(非政府機関)は、統一教会は誇張しているか、レポートをねつ造していると非難している。

In 2008 an adult member of the Unification Church was released after reportedly being held against his will by family members and a professional deprogrammer for over 12 years. Prosecutors did not pursue the case citing insufficient evidence. The case was on appeal at the end of the reporting period.

2008年には、成人である統一教会のメンバーが(監禁から)解放された。報道によれば、そのメンバーは、彼の意志に反して、家族のメンバーと職業的改宗家により、12年間監禁されていた。検察庁は、証拠不十分として、起訴しなかった。このケースは、(この報告書期間内の最後の時点で)再審議中である。


2010年度下半期版(報告期間:2010年7月1日〜2010年12月31日)
発表日:2011年9月13日
http://www.state.gov/j/drl/rls/irf/2010_5/168357.htm
For several years deprogrammers working with family members have reportedly abducted Unification Church members, members of Jehovah's Witnesses, and other minority religions. The number of reported cases has declined sharply since the 1990s. The Unification Church reported six members were abducted during the reporting period, two of which remained confined at year's end. One was reportedly released after police interviewed her parents. These reports could not be independently confirmed, and some nongovernmental organizations (NGOs) have accused the Unification Church of exaggerating or fabricating these reports. In 2008 an adult member of the Unification Church was released after reportedly being held against his will by family members and a professional deprogrammer for over 12 years. Prosecutors did not pursue the case citing insufficient evidence. On October 6, a civilian panel upheld the decision not to pursue criminal charges.

何年もの間、ディプログラマーが家族のメンバーと協力し、統一教会のメンバー、エホバの証人のメンバーを拉致しているという報告が上がっている。1990年代以降、報告された事件の数は、著しく減少している。統一教会は、この報告期間中に、6名が拉致され、うち2名は、報告期間最後の時点で監禁されたままであると報告した。一人は、警察が両親を尋問したあと解放されたと報告された。これらの報告は独自に確認出来なかった。あるNGO(非政府組織)は、統一教会が、これらの報告を誇張し、捏造していると非難している。家族と専門のディプログラマーにより、自らの意思に反して12年以上にわたり拘束されていたとする統一教会の成人メンバーが、2008年に解放された。検察は、証拠不十分として、不起訴とした。10月6日には、検察審査会が「不起訴相当」の判断を下した。

アメリカ国務省の宗教自由報告書の読み方には、4つのポイントがあると、以前の記事で示した。
http://humanrightslink.seesaa.net/article/374821327.html
★同じ表現・文章の繰り返し
★「誰々さんが 〜 と主張した」の連発
★変化は突然に、
★裁判結果とともに、記述が増える

2010年度版の特徴をみるためには、それまでと違ったところがないか・・・それを確認すれば、いいのである。

★新しい文言(もんごん)現る!
その文言とは、次の通りである。上記二つの報告書に、同じ文章が挿入されている。この部分は、「統一教会が、そのレポートの報国期間中に、〜名が、拉致監禁されたと報告した」という文章に続く部分である。
These reports could not be independently confirmed, and some nongovernmental organizations (NGOs) have accused the Unification Church of exaggerating or fabricating these reports.

これらの報告は独自に確認出来なかった。あるNGO(非政府組織)は、統一教会が、これらの報告を誇張し、捏造していると非難している。

統一教会からの拉致監禁情報に対し、「独自には確認できず」そして、「ある NGO は、統一教会の誇張と捏造であると非難している。」という文言を入れてしまった。拉致監禁グループや、それを擁護する人々は、この上ない「言い訳」を手に入れたことになる。統一教会が拉致監禁問題を報告したが、国務省はその報告の真偽は独自には確認できなかった。だから、「統一教会の主張する拉致監禁とか脱会強要など、嘘の主張である」ということだ。

2010年度版に続く2011年度版の発表は、2012年7月30日である。2011年度版で、「独自に確認できなかった」との文言は消えている。と、いうことは、2010年度版の発表日の2010年11月17日から、2012年7月30日までの1年8ヶ月の期間、「統一教会が報告した拉致監禁の事例は、独自には確認できなかった」という文言が生きているわけだ。この罪な「独自に確認できなかった」という文言により、いろいろな動きが出ることになる。

この1年8ヶ月の期間(2010.11.17 - 2012.07.30)を、拉致監禁暗黒期と呼びたい。「暗黒期」という言葉を、この記事のタイトルにも使ったが、言葉を変えれば、拉致監禁グループ、見て見ぬふりをする政府、警察に、都合よい「言い訳」を与えてしまい、拉致監禁問題の解決を長引かせてしまった・・・と、いうことである。

では、その「暗黒期」には、どんな事件が起きたのか?三つほど例をあげたいと思う。


1. アメリカ連邦議会議員の訪日
2012年の初夏のことであるが、アメリカの議員が日本を訪問した。その訪問については、2012年8月1日にアメリカ連邦議会で開催された「同盟国での宗教迫害に対するアメリカの対応」という会見を報道した映像で、語られていた。そのアメリカの議員は、日本の拉致監禁問題を日本政府に訴えるために訪日した。(しかし、今は、映像のリンクは消えているので、確認のしようがない。その会見では、アーロン・ローズ博士インジン・ムーン女史等がスピーチした。)

日本の法務省は、そのアメリカの議員になんと言ったか? 「貴国の国務省の報告書では、『独自に確認できなかった』と言っているので、これ以上の対応はできません。」(この箇所は、拉致監禁問題に詳しい情報筋より確認した。さらに以下のブログにて、同様の内容が掲載されている。http://omoroiyan2.blogspot.com.au/2012/08/blog-post.html


2. カルト新聞による意図的な悪用
次は、「独自に確認できなかった」が、とんでもない意図を持った人々により、とんでもない結論に導かれた事例。しかし、彼らは、そんなに賢くなかったようだ。

やや日刊カルト新聞(以下、カルト新聞)の主筆、藤倉善郎氏は、このアメリカ国務省の宗教自由報告書を用い、意図的に、ある結論を導き出した。以下は、カルト新聞内の、該当箇所である。

統一協会“反拉致監禁キャンペーン”後藤事件で第1回弁論 (2011年3月26日付け)
http://dailycult.blogspot.com.au/2011/03/blog-post_24.html#links
カラー等の強調は、当ブログの管理人による
米本氏は「反統一教会陣営による信者の拉致・監禁」を告発した『我らの不快な隣人』の著者だか、その偏った取材姿勢など様々な問題点が度々指摘されており、拉致監禁問題を「国別人権報告書」で取り上げた米国務省からも「統一教会から独立した情報源」とは認められなかった人物である(※)。

(※註)
 アメリカ国務省は、統一協会が主張する「拉致監禁問題」について、こうリポートしている。
「However the Unification Church reported five members were abducted during the reporting period. These reports could not be independently confirmed, and some nongovernmental organizations (NGOs) have accused the Unification Church of exaggerating or fabricating these reports.(統一協会は、当報告書の対象期間中に5人の信者が拉致されたと報告している。しかしながら、これらの報告については統一協会から独立した根拠により確認することは出来ず、幾つかのNGO団体は、これらの報告は、統一協会が誇張し、あるいは、ねつ造したものであると非難している。)」


これについては、以下のブログで、その日本語訳、その結論の間違いを完璧に指摘している。ひとつ、付け加えることがあれば、その日本語訳をしたのは、藤倉善郎氏では、絶対にないということだ。その後の、彼の国際会議での活躍からみての結論である。(だからこそ、藤倉主筆は、そのような結論に躊躇もなく、もっていけたのだろう。)

★火の粉を払え:カルト新聞と主筆様を評す(補足編)−意図ある誤訳
http://yonemoto.blog63.fc2.com/blog-entry-265.html#comment4362

★当ブログ:意図ある意訳は誤訳である:「やや日刊カルト新聞」を評す
http://humanrightslink.seesaa.net/article/201554068.html#comment

なお、この記事では省略するが、2010年度版報告書には、後藤徹氏の開放に関して、伝聞情報ではなく、断定表現として、国務省は報じている。上のリンクのどちらでもいいのだが、最後の方、「アメリカ国務省の拉致監禁問題についての扱い」という小見出しの部分に記しているので、参考にして欲しい。


3. 国務省報告書を引用したある悲劇
最後に、「独自に確認できなかった」との文言を引用した、ある人々にとっての悲劇。現時点では、正確に言うと、悲劇になるかもしれない事件・・・ということになる。後藤徹氏は、2011年2月3日に、宮村峻氏、松永牧師、家族等に対し、2億円の損害賠償請求の民事提訴を行った。時期に注目して欲しい。この時期は、国務省の「独自には確認できなかった」拉致監禁暗黒期のさなかである。

被告側が、拉致監禁・脱会強要の存在を否定、または低下せしめるため、アメリカ国務省の2010年度版「独自に確認できなかった」との文言を引用し、裁判所へ書面に盛り込んだというのだ。その文言が、判決日に向かう最新版(2012年度版)にも記載されていればよいのだが、(拉致監禁グループにとっては)残念ながら、その記載があったのは、暗黒期の1年8ヶ月の期間だけである。

次回は、2011年版をみていく。

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posted by 管理人:Yoshi at 19:02| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ政府レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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