2011年01月28日

アメリカのディプログラミングの盛衰(12)

1ヶ月半かかったことになったが、今回の訳がフェファーマン氏のレポートの最後のものとなる。

1971年に始まったアメリカのディプログラミングは、今回のスコット裁判で、ディプログラマーとCAN(Cult Awareness Network = 反カルト団体)に多額の賠償金支払いが決定した1995年に息の根が止まった。(スコットの監禁は1991年である。)その後、CANは破産宣告をせざると得ず、そして、皮肉なことにCANが最も反対していたサイエントロジー教会がCANを買収した。

これで、フェファーマン氏の記事が終わりであるが、このレポートに関して、私なりの考えを、1回(もしくは2回)でまとめる予定なので、この連載はあと少し続く。


以下、原文と日本語訳 
斜線は訳者による注、 記事内リンクと青文字は訳者による
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The Jason Scott Case
ジェイソン・スコットのケース


Although deprogramming was already on the decline, the Jason Scott case sealed the doom of the deprogramming movement in the United States and put the Cult Awareness Network, which actively conspired with the faith-breakers, out of business. Jason Scott, at the time of the failed deprogramming attempt on him in January 1991, was an 18-year-old member of the Life Tabernacle Church, affiliated with the United Pentecostal Church International.[24]

ディプログラミングはすでに衰退の一途をたどっていたが、ジェイソン・スコット裁判が、アメリカのディプログラミング活動の息の根をとめ、信仰破壊者と共謀していたCAN(Cult Awareness Network)を破産に追い込んだ。1991年1月、ジェイソン・スコットへのディプログラミングは失敗したが、その時、彼は18歳で、国際ペンテコスタル教会の下部組織のライフ幕屋教会のメンバーだった。

A jury in the United States District Court for the Western District of Washington, after a six-day trial in Scott v. Ross, found the plaintiff Jason Scott’s abduction by deprogrammer Rick Ross and his team had violated Scott’s civil rights and that it constituted criminal negligence. They awarded Scott $875,000 in compensatory damages and $4 million in punitive damages. The jury allocated 10 percent of the negligence liability and $1 million of the punitive damages against the anti-cult organization, Cult Awareness Network (“CAN”), formerly incorporated under the name of Citizen’s Freedom Foundation, on the grounds that CAN had conspired with Ross to deprive Scott of his civil rights.

ワシントン西部区域のアメリカ地区裁判所の陪審員は、スコット 対 ロスの6日間に渡る裁判の末、ディプログラマーのリック・ロスと彼のチームによる原告ジェイソン・スコットの誘拐は、スコットの市民権を侵害しており、そして、犯罪的過失であると決定した。陪審員は、87万5000ドル(約8750万円)を補償的損害賠償として、そして懲罰的損害賠償として400万ドル(約4億円)のスコットへの支払いを裁定した。陪審員は、反カルト組織のCAN(Cult Awareness Network)に対抗して、過失責任の1割と、懲罰的損害賠償から100万ドル(約1億円)を割り当て、CANがロスと共謀しスコットの市民権を奪ったとの理由から、「市民の自由財団」と言う名前で正式に法人化組織を作った。

(訳者注:この民事裁判の判決は、1995年9月の事である。
http://en.wikipedia.org/wiki/Jason_Scott_case )

(訳者注:補償的損害賠償および懲罰的損害賠償◆補償的損害賠償は被害者が被った身体的および財産的損失を補償するための賠償金。懲罰的損害賠償は、不法行為訴訟などにおいて、加害行為の悪性度が高い場合に、加害者に対する懲罰および一般的抑止効果を目的として補償的損害賠償のほかに認められる損害賠償。 http://eow.alc.co.jp/compensatory+damages/UTF-8/ )

(訳者注:上記段落の後半の、陪審員とジェイソン・スコットとCANと市民の自由財団の関係は、今ひとつ不明である。日本語訳は、原文記事に従っている。)

The Cult Awareness Network filed an appeal to the United States Court of Appeals for the Ninth Circuit with respect to the jury’s verdict finding CAN liable for conspiracy and negligence.[25] The court of appeals noted that “[t]he evidence indicates that it was CAN’s practice to refer people to deprogrammers, including Rick Ross, and that Ross was known to engage in involuntary deprogramming.” The court found it important that CAN’s executive director had given referrals to Ross. The court found sufficient evidence, if believed by the jury, to establish that CAN members routinely referred people to deprogrammers, including Ross, that Ross conducted involuntary deprogrammings, and that CAN was aware that Ross conducted involuntary deprogrammings. The court also held that even though CAN had an official policy prohibiting involuntary deprogramming, this neither undermined the evidence concerning CAN’s practices nor precluded the imposition of vicarious liability on CAN. Following the court of appeals decision, CAN filed for bankruptcy.

CANは、CANが共謀と過失に責任があると定めた陪審員の決定を不服として、アメリカ第九巡回上告裁判所に上告した。上告裁判所は、「人々に、リック・ロスをも含むディプログラマーを紹介するのはCANの実践内容であり、ロスは強制的ディプログラミングを実践していたと言う事は証拠が示している。」と述べた。裁判所は、CANの執行役員がロスを紹介したことは重要であるとした。CANメンバーが定期的に人々にロスのようなディプログラマーを紹介し、ロスが強制的ディプログラミングを行い、CANはロスの強制的ディプログラミングについて知っていたということを立証するために、裁判所は十分な証拠を持っているとした。そして、CANは強制的ディプログラミングを禁止しているという公式見解を持っていたとしても、これは、CANの実践内容の証拠を過小評価するものではなく、CANの代償責任の負担を除外するべきでもないとの考えを裁判所は示した。上告裁判所の判断の後、CANは、破産宣告を行った。

(訳者注:アメリカ第九巡回上告裁判の判決は、1998年4月8日である。私の調査によれば、CANが破産宣告をし、サイエントロジーに買収されたのは、その判決の前、1996年11月の事である。なので、この段落の最後の文章は、正確ではないはずである。上記日本語訳は、原文に従っている。 
   http://en.wikipedia.org/wiki/Jason_Scott_case )

Summary and Conclusion 要約と結論

Although there were setbacks along the way, the legal battle against abduction and faith-breaking in the US generally followed a steady path to victory. Beginning with the convictions of Ted Patrick in the 1970s through the death-blow dealt to the Cult Awareness Network in 1991, the “deprogrammers” found themselves on the outside of the law. Even when police and local judges cooperated with them, their legal victories were short-lived. Civil libertarians and the mainline churches were outspoken in the opposition to faith-breaking. Wrong decisions by judges were overturned by higher courts.

長い戦いにおいては後退もあったけれど、アメリカにおける拉致・誘拐と信仰破壊に対する法廷闘争は、全般的に勝利に向けて着実に進んでいった。1970年代のテッド・パトリックの有罪判決に始まり、1991年のCANへの致命的打撃に至るまで、ディプログラマー達は違法行為をしていると見なされた。警察や地方の判事が彼らに協力的であったとしても、彼らの裁判の勝利は長続きはしなかった。人権活動家、メインのキリスト教会は進行破壊に対して黙ってはいなかった。裁判官による間違った判断は、上級裁判によって覆された。

Looking back over this brief survey of a complex history, one turning point in the battle appears to be the Eileers case, in which a federal appeals court overturned the decision of the Minnesota Supreme Court which had ruled that any cooperation with one’s captors, even in order to obtain and opportunity of escape, provided the abductors with legal cover for their crime. The Molko case resulted in the thorough discrediting of the “brainwashing” theory. The Ward case officially established that minority religions such as the Unification Church were a “protected class” deserving of First Amendment protections of religious liberty. The Britta Adolfsson case showed that the “choice of evils” defense did not protect parents and faith-breakers from legal liability. Finally, the Jason Scott case established that a supposedly “educational” group such as the Cult Awareness Network, could be held legally liable for violating a persons civil rights by collaborating in faith-breaking.

この込み入った歴史の概略を振り返ると、戦いの一つの転換点は、エイラーズ裁判だと思える。そのエイラーズ裁判では、連邦上告裁判所が、ミネソタ最高裁の「監禁犯に協力することは、たとえ逃走の機会を得る目的であったとしても、監禁犯の犯罪に対して法律的保護を与えるものである」という決定を覆したのである。モーコ裁判では、洗脳理論が完全に信用を失ってしまった。ウォード裁判では、統一教会のような少数派宗教も(米)憲法修正第一条の宗教の自由の保護を受けることのできる事を正式に証明した。アドルフソン裁判では、「悪の選択」防衛理論は、両親や信仰破壊者を法律的責任から守らないことを示した。最後に、スコット裁判では、CANのような教育団体と見られていた団体も信仰破壊者と協力すれば人権侵害の責任を問われることを明らかにした。
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日本語訳終了


ここから、管理人(訳者)のコメント:
アメリカでは、ディプログラミングの始まりから終焉まで、20年(もし、CANが崩壊するまでとするなら25年)かかったことになる。フェファーマン氏が、最後の要約と結論で述べている通り、アメリカでは裁判闘争を通して、「ディプログラミングは違法である」という結論が導き出された。さらに、興味あることは、CANがディプログラマーを紹介したことにより、4億円の賠償金の判決が下りたのである。

このレポートを読んでの、私なりの結論は、次回に書くことにする。


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この記事へのコメント
闘いの始まり

「アメリカでは、ディプログラミングの始まりから終焉まで、20年(もし、CANが崩壊するまでとするなら25年)かかったことになる」

20年…。気の遠くなる話ですね。
まあ、覚悟して、日本でも地道に運動を続けるしかないですね。
まあ、勝つことは間違いないので、希望ですが。
Posted by みんな at 2011年01月31日 08:24
みんなさん、
コメントと、そして長い連載最後まで、読んで頂きありがとうございます。私も、始めて知ることばかりで、訳しながら勉強になりました。

2月に韓国で家庭生活を始める予定だったT子さんの拉致監禁事件で、韓国人婚約者 Mr Lee のT子さんの両親への手紙の英訳を終えました。ちょっと時間がかかってしまったのは、愛の表現に私自身がなれてなくて、ある程度まともな英語にするのに人の助けが必要だったからです。私の英語ブログにアップ致しました。
http://humanrightslink.blogspot.com/2011/02/korean-man-sent-letter-to-his-fiancees.html

Posted by Yoshi at 2011年02月02日 09:07
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